「空港アクセス戦争」はこんなに過熱していた 成田、関空を舞台にJRと私鉄が激しく火花

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ピーチ仕様の「ラピート」は白とピンクでカラーリングされている

1994年に開港した西日本のハブ空港・関西空港でも、JRと私鉄のシェア争いは繰り広げられている。

関空の鉄道アクセスを担うのはJR西日本と南海電鉄の2社。JR西日本は「はるか」、南海は「ラピート」という空港特急列車を投入し、客の奪い合いに躍起だ。

両社の空港アクセス輸送人員を比較すると、JR西日本が一歩リードしている。南海は料金こそ安いのだが、終点が大阪ミナミの玄関口であるなんばで、そこから先は他社線に乗り換える必要があるのがネックだ。

一方のJR西日本は、京都など他都市との間を直通で結んでいるという強みがある。人気のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)への乗り換え移動も簡単で、「USJがお目当ての人はJRを使うのではないか」と見る関係者も多い。成田エクスプレス同様、JRが乗り放題となる外国人向けのジャパンレールパスも輸送人員増に一役買っている。

ところが、近年になって南海が巻き返しに動き出した。関空─なんば間の割引切符と交換できる引換券を2012年3月からピーチの機内で販売。開始時期は京成のスカイライナーバリューチケットより1年以上早く、南海のほうが本家といえる。この切符は2013年度に9万6000枚を売り上げるヒット商品となった。

LCC向けのPR展開もぬかりない。昨年9月には、ラピートの一部編成の色をピーチの機体と同じ白とピンクに塗り替えた。こうした戦略を取ることで、「LCCなら南海」というイメージ醸成につなげていく戦略だ。

関空バスでは南海が優位

さらに視野を広げると、空港アクセスバスの台頭も著しい。

首都圏の空港バスといえば、白地にオレンジの塗装が目を引く「エアポートリムジン」が知られている。都心の各所と成田空港間を結ぶ料金は3100円。これに対して、京成バスの「東京シャトル」(東京駅―成田空港間)の料金はたったの900円。平和交通とJRバス関東が共同運行する「THEアクセス成田」の料金も1000円と割安だ。どちらも、低価格を武器に利用者を増やしている。

成田空港同様、関空でも空港アクセスとしてバスが台頭している。南海はリムジンバスを運営する南海バス、関西空港交通を傘下に抱える。鉄道が走っていない早朝や深夜の時間帯にバス便を投入し、じわじわとシェアを伸ばしている。鉄道ではJR西日本にリードを許すものの、鉄道とバスのトータルで見れば、関空アクセスの主役は南海だといえそうだ。

かねてから、都心部とのアクセスの悪さが指摘されてきた成田、関西の両空港。JRと私鉄が火花を散らす中で利便性が向上するのであれば、利用者にとってはうれしい限りだ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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