コーポレートコミュニケーション経営 広報戦略が会社を変える 柴山慎一著 ~経営者のための攻めのCSRの手引き
コミュニケーションについて赤ん坊と親との意思疎通から説き始める本書は、「聞くことの重要性」にまず注意を喚起する。続いて「阿吽(あうん)の呼吸」、「言わずともわかる」コミュニケーションモデルを暗黙のうちに価値の高いものとしている日本企業と日本人の姿勢を批判する。
そもそもなぜ企業広報を行うのか。企業の製品価値の総和よりも企業全体の価値のほうが高いという信念を著者は「コーポレートブランド=Σプロダクトブランド+α」という数式で表わす。そして、企業広報の最終・最高発信者である社長を補佐する広報責任者に対して、「社内的にきめ細かくアンテナを張り巡らせ」、「近い距離で接し、深く交流しておく」など、細かくアドバイスする。
企業広報は、社内(社員)に対しても行う必要があるとして、「社員には自社のらしさをしっかりと認識させる」、「自社のらしさが転々流通して最終顧客にまで届く」仕組みづくりを勧める。また「CEOキャピタル」と呼ぶ、社長の資質や性格が企業広報に果たす役割を、アップル等の例で説明する。
最も印象深いのは、ファイザーの禁煙支援の事例だ。「喫煙率の高まっている若い女性をターゲットに、男性は恋人や結婚相手には喫煙しない女性を好んでいるというアンケート結果を発表」したり、子供を受動喫煙から守るために禁煙マークの横にほほ笑んでいる幼児を配置したポスターを作るなど、さまざまな方法で企業として禁煙キャンペーンを展開したという。
「日本においてはプロダクトブランドよりもコーポレートブランドが重用される傾向がある」など、賛同できない主張もあるが、このほかにも「行間を充実させるコンテンツ」、「社員へのブーメラン効果」ほか、実践に役立つ指摘が豊富にある。
しばやま・しんいち
野村総合研究所総務部長。慶應義塾大学経済学部卒、同大学院経営管理研究科終了(MBA)。NECを経て、野村総合研究所入社。経営コンサルティング一部長、コンサルティング第一事業本部長、広報部長などを経る。2008~10年日本PR協会理事。
東洋経済新報社 1785円 183ページ
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