セキュリティー業界で超大型のM&Aが相次ぐワケ ジェン・デジタル社長に聞く業界の最前線
アメリカの平均的な数字では、自分の社会保障番号などが一度流出してしまうと、一気に17個ぐらいのローンを借りられてしまう。そうすると、訴訟を起こして、被害を取り戻すのにものすごい金額と時間がかかってしまう。
われわれの製品は、それをできるだけ防ぐ、対策をするというものだ。保険のように被害をカバーしたり、大手の銀行やカード会社、弁護士などと交渉をすることで、ユーザーの負担を軽減することができる。
これは個人情報保護の分野だが、4つの注力分野があるので、デバイスをマルウェアやスパイウェアから守る、パスワードをより強いものに変えるなど、すべてのポートフォリオを使ってユーザーを守ることができる。これは他社にない、われわれの強みだ。
――こうした事業は企業向けにも有効に感じます。もう一度、企業向けの領域に参入する意向はありますか?
答えはノーだ。理由は2つある。
1つ目はわれわれがコアとする消費者向けの市場で7つのブランドを持っていること。2社が統合したことで、メリットが大きくなったので、投資を積極化し、より成長をさせていきたい。
2つ目は、消費者向けと企業向けでは、販売方法が異なることだ。企業を相手にする場合は、多くのフィールドセールス(外勤営業)、サポートするインフラ、ヘルプデスクが必要だ。
また企業向けは、(数多くの社員を管理する必要があるため)UIやコンソールも違うものが求められる。
そのため、企業向けにシフトする予定はない。ただし、社員数10~20人ぐらいの中小企業向けには販売を広げていきたいと思っている。
日本市場では、通信会社や(パソコンの)OEM(相手先ブランドによる生産)メーカーと戦略的に協業しており、今でもポジションが強い。既存のパートナーやまだ付き合いが新しいパートナーとの関係性を強化し、マーケットシェアをこのまま継続して伸ばしていきたい。
敵は競合他社ではない、ハッカーだ
――業界では大きな再編が相次いでいます。背景をどう考えていますか。
そもそも、再編・統合があるのは業界自体の動きがとても速いからだ。その中でも、セキュリティー業界の風景はすごいスピードで動いている。
この業界独特のことだが、われわれは毎朝起きて、「どうやって敵と戦うか」と考えるとき、敵というのは競合他社ではなく、攻撃者であるハッカーのことを考えている。
近年では、ハッカー側でも生成AIをさかんに活用し、脅威を増している。こうした人たちと戦うためには、最強の武器が必要だ。M&Aを使って、よい人材や製品を獲得し、一番よいポジションにいたいと思うのが当然のことだ。
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