学校の「金融教育」必修化で前進もいまだ手薄、知識不足や教材選びへの対応策 外部とうまく連携して進めるのも選択肢の1つ
――お金教育の講座やイベントはどのような内容ですか? 開催する際に大切にしていることは、どんなことでしょう。
「モノやお金を大切にする」「一消費者として、ネットゲームでの課金などさまざまなトラブルから身を守り、お金の知恵をつける」「お金は働くことによって手に入るものであることを知り、長期的な視野で暮らす大切さや仕事・経済の本質を学ぶ」、この3つを柱に12のプログラムを用意しています。
中でも、小学生向けで、おこづかいのもらい方、使い方、貯め方、管理の方法を学ぶ「おこづかい講座」、年齢に応じて社会保険、税金、家賃、食費、光熱費、教育費など生活にかかるお金について学ぶことができる「生活にかかるお金講座」が人気です。夏休みは、「円高・円安になったらハンバーガーはどうなる?」など、海外に目を向けお金が世界とつながっていることを学ぶ「日本のお金・世界のお金講座」も注目を集めています。
銀行や保険、株式の仕組みや金融商品について触れることももちろんありますが、「広く公正な視野でお金の知識を身に付けてほしい」という思いから、特定の金融商品の紹介に偏ることなくフラットで中立な視点でお話しすることを大切にしています。
2022年度から高校で投資教育が必修化、外部リソースとの連携を
――2020年度より、新学習指導要領に基づき小・中学校、高等学校で金融教育が拡充されています。2022年度からは、高校で投資教育が必修化されました。「キッズ・マネー・ステーション」では、金融教育とどのように関わっているのでしょうか。

全国の小・中学校、高校や自治体、教育委員会から声をかけていただき、それぞれのニーズに合う講座を出張授業(出前授業)という形で講師を派遣し金融教育を行っています。
小学校では中学年以上の児童対象の授業が多く、その際は、特別活動やPTAなどの時間に「おこづかい講座」「生活にかかるお金講座」を行うケースが多いです。授業時数が多くコマ数が限られ、「年に一度、単発」で出向くことが多いですが、児童の反応などから「次年度も」と継続的に声をかけていただくこともあります。中学校は、3年という期間の短さや高校受験の準備などから外部講師を呼んで金融教育を行う時間的余裕がないのか、小学校と比較すると需要が少ないのが現状です。
高校については、2022年4月から金融教育が拡充されたこともあり、金融教育を担当する家庭科の先生に向けた研修・勉強会の講師としてお話ししたり、特別授業の枠で、卒業後就職する生徒向けに「社会人になる前に知っておきたいお金」をテーマにお話ししたりしています。
――学習指導要領改訂では、高校の家庭科において、家計全体の管理の仕方や生涯を見通した資産形成、貯蓄や投資の基本について盛り込まれています。現場の教員の方々の反応はいかがですか?
高校の家庭科の先生に向けた研修・勉強会では、「生徒にどのように教えたらよいのかわからない」などと不安を抱く先生が一定数いらっしゃいます。これまで衣・食・住を中心に教えてきた家庭科の先生が、ご自身が学生時代に学んでこなかった投資や資産形成などについての知識を蓄える必要があるため、不安を抱くのはごく自然なことだと思います。