働き方改革で「学校に緊急提言」、その効果やいかに?今がラストチャンスの訳 中教審が発出、生かすかどうかは誰次第か?

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文章が長くてわかりづらいかもしれないが、要するに、なぜ働き方を見直す必要があるのかというと、1つは健康のためだ。逆に言えば、教職員の健康を犠牲にするような取り組みにはストップをかけていく必要がある。例えば、研究授業(授業を公開して、協議する活動)や学校行事等での過度な負担は、すぐにでも考え直してほしい。部活動で、大会などで勝ちたいからといって、休日返上で練習試合などを組みまくることは、教員の健康上でも、また生徒の健康や自由時間の確保のうえでも問題だ。

上記を引用した中で、「創造性を高め」とか「学び続け」とあるのも重要だ。先生たちが疲れて眠いままでは、仕事で創造性は発揮できないし、新しいことから学ぼうという気力もなくなっていく。家と学校との往復だけの毎日では視野が狭くなりがちだ。また、私の調査でもわかっているが、先生たちは子どもたちには「勉強しなさい、読書しなさい」と言っておきながら、自分たちの学習はたいへん「弱い」人も多い(拙著『教師崩壊』などを参照)。教員自身が探究できていなくて、どうして生徒の探究的な学びをサポートしていけるのか。

逆に言えば、現役の先生たちが、心身ともに健康で、ゆとりを持って子どもたちと接している。教育委員会や校長からの指揮命令や、やらされ仕事は少なくなり、自身やチームの創造・工夫が生きる、面白い仕事ができている。「今度はこんなことも学びながら、授業に生かしたい」と言う先生も多い。こういう状況になれば、教員人気も上がってくると思う(処遇の問題などを軽視してよいわけではないが)。

以上は、かなりかみ砕いた私なりの意味づけ、ストーリーだが、ぜひ各地の教育長や校長は、ご自身なりに理念を語り、教職員と共有してほしい。そこが第一歩だと思う。

肝心の中身は

今回の緊急提言ならびに文科省通知では、教育委員会がより積極的に取り組むべきことを強調している。例えば「学校給食費の徴収・管理に係る公会計化等を進めること」「警察においては、児童生徒の補導時等の一義的な責任は保護者にあることを踏まえた対応を図ること」「過剰な苦情や不当な要求等の学校だけでは解決が難しい事案については、教育委員会等の行政の責任において対応することができる体制の構築」「民間企業向けクラウドツールの転用による校務処理の負担軽減を図る」ことなどだ。

これらは、教員の時間的な負担だけでなく、精神的なストレス軽減にも寄与する。現状では、進めている自治体とそうではない自治体との差がどんどん広がっている。

また、報道などでも注目されていたが、国が定める標準授業時数(年間この授業時間は確保してねという基準)を大幅に上回っている学校は、今年度途中からでも見直してほしいことを明記している。これは、校長の権限で変更可能だが、教育委員会の中には、学力テストなどの順位を気にするあまり、学校に授業時間を増やすように「指導」しているところもある。教育委員会の施策と姿勢を変えるべきことでもある。

もちろん、各学校が進めることも多い。例えば、提言ではこう書いている。

それぞれの学校行事の教育的価値を検討し、学校としての体裁を保つためのものや前例のみにとらわれて慣例的に行っている部分をやめ、教育上真に必要とされるものに精選することや、より充実した学校行事にするため行事間の関連や統合を図ることなど、学校行事の精選・重点化を図る必要がある。

 

ややキツイ言い方だとは思うが、コロナが5類になったのだからということで、保護者や地域からの要望はあるかもしれないが、過度な準備や派手なパフォーマンスを競うような学校行事はやめましょう、ということだ。

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