浜岡原発「強行」停止で賛否、岐路に立つ原発政策

浜岡原発「強行」停止で賛否、岐路に立つ原発政策

首相の要請で原子力発電所の稼働が停止--。中部電力・浜岡原発(静岡県御前崎市)をめぐり、極めて異例の事態が起こった。

「内閣総理大臣からの要請は非常に重いものだと受け止めている」「原子力に対する地元住民、国民の不安を真摯に受け止め、安全を最優先する考えを貫くべきだと判断した」。5月9日、中部電の水野明久社長は苦渋の表情で、手元の文章を読み上げた。

中部電は菅直人首相の要請を受け、浜岡原発4号機(定格出力113・7万キロワット)、5号機(同138万キロワット)の運転停止と、2010年11月から定期点検で停止中の3号機(同110万キロワット)も運転再開しないことを決めた。すでに1、2号機は廃炉準備中で、これによって、中部電が持つすべての原始炉が運転を停止することになる。

浜岡原発は東海地震の想定震源域の真上に立地しており、以前から「最も危ない原発」と指摘されてきた。今回政府も、同地区で今後30年以内にマグニチュード8程度の地震が起こる確率は87%という、地震調査会の予測を基に停止を要請したとしている。が、中部電はもともとそれを前提に耐震基準を設定し、監督機関である経済産業省原子力安全・保安院の認可も受けている。それでも「(首相による)法律を超えた特別な判断があった」(保安院)。

低い浜岡への依存度

東京電力・福島第一原発の事故により、原発不信が高まっているとはいえ、超法規的な形で停止要請を行う必要はなかったはず。6日の首相会見の前に、細野豪志首相補佐官から報告を受けた静岡県の川勝平太知事は「4、5号機はそのまま稼働を続け、12年1、3月に行う定期点検で止めればいい」と伝えていたというが、これが最も自然な物事の決め方だろう。

“過激”な決断を呼び込んだ背景には、地元経済の原発依存度の低さもある。中部電が抱える原発は浜岡だけで、11年度の供給計画に占める原子力の電源構成はわずか12
%。それでも現況、東電や九州電力へ融通するだけの余裕がある。09年8月の真夏に駿河湾沖地震で全号機が停止した際も原発なしで乗り切った。燃料コストが年間2500億円追加になるというものの、休止している火力発電を稼働すれば、原発の穴を埋めることはそう難しくない。

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