「経営ありきの変革はしない」就職率1位の東京家政大に「女子大離れ」を聞く イメージ先行?「女子大不要論」の裏にあるもの

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管理栄養士や看護師、社会福祉士などの国家資格試験合格率は相変わらず非常に高いが、資格を取ることを目的とせず、その先をイメージする学生が多くなっているということだ。就職先は病院や保育園・幼稚園のほか、公務員や教員になって学校に勤めるケースも多い。少数派だがデザイナーやキャビンアテンダントなどになる卒業生もおり、一般企業を含めその進路は多彩だ。

卒業時の満足度は9割超、実就職率などもランキング1位に

学生のキャリア支援を担当していた田中江梨子氏も同大の卒業生だ。彼女もまた、近年の学生と接していて感じることがあるという。

「選択肢が多くなっていることが、反対に学生の悩みの種になっているのかなと。学生はあれもこれもやりたいという意欲があり、やろうと思えばできる社会になりつつあります。無限の可能性の中で、本人の希望をどう絞り込んでいくか。私たちもその点を考慮したサポートを心がけるようにしていました」

岩井氏と同じく広報・宣伝部の田中江梨子氏。Web戦略などのほか、過去には学生の進路アドバイザーも担当

こうした学生の傾向は、専門職型ではなく、広く長い視野での「よりよい就職」を目指してきた同大の指導によるものかもしれない。

「私たちは一貫して、いい人生とは何か、女性が自分の力で生きていくために何が必要かを伝え続けてきました。本学で学ぶ学生たちにも、その考え方が浸透してきているのかなと思います」(岩井氏)

その成果はほかにもさまざまな形で表れているようだ。岩井氏曰(いわ)く、同大を受験する学生の併願先は埼玉大学や千葉大学、お茶の水女子大学などの国公立大学が多く、東京家政大に入学するときには学びへの思いが燃え尽きてしまっていたり、いわゆる不本意入学だったりする学生もいるという。そのため、入学直後のアンケートでは、大学に対する満足度は7~8割程度にとどまっている。だが4年を経た卒業時には、その満足度は9割を超えるそうだ。

「学生たちは先輩や卒業生の姿を通じて、現代社会で活躍する女性のロールモデルを身近に感じることができます。働くことへの確かなビジョンが持てることもあり、就職率は非常に高い。これが卒業時の満足度に貢献しているのでしょう」

岩井氏のこの言葉どおり、2022年度の同大の実就職率は95.0%という高水準に。「2023年実就職率ランキング」(大学通信オンライン調べ)で全国の女子大学中1位、総合9位にランクインした。またリクルート進学総研による「進学ブランド力調査2023」では、関東の女子生徒が志願したい女子大学の1位に輝いた。こうした結果を受けて、田中氏も笑顔で実感を語る。

「学生と話していると『やりたいことのための学びができるからここを選んだ』という学生が多く、とてもうれしく感じています。また、校舎やキャンパスのきれいさや学生たちの落ち着いた雰囲気は、女子大らしいよさだといえると思います。そうした空気をオープンキャンパスなどで感じ取って、本学を気に入ってくれる学生もたくさんいます」

法律ができても変わらない、日本のジェンダーギャップ

岩井氏は「家政学」という伝統的な分野が現代社会で果たす役割をこう語る。

「国の政治は『国政』と呼ばれますが、それはたくさんの家庭による『家政』の集合体です。国と対峙するのは企業だけでなく家庭であり、国政を支えているのは家政であるともいえます。人の生き方や家庭のあり方が変化する中、それをどう教えるか悩みは尽きませんが、私たちは自信を持って家政学を伝えていきたい。人のつながりや家政を大切にすることが、ひいては国政をよくすることにつながるのではないか――この考え方を『家庭科』に限ったものにせず、もっと小学校や中学校、高等学校でも教えてほしいと思っています」

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