ITやプログラミングから女子中高生が遠のく訳 女性の活躍を阻む「無意識バイアス」の壁

世界経済フォーラム(World Economic Forum)は、2006年から「Global Gender Gap Report」で男女格差を測るジェンダーギャップ指数を公表している。経済・政治・教育・健康の4つの分野を基に指数を算出し、各国の順位をランキングで紹介しているのだ。「Global Gender Gap Report2020」では、1位アイスランド、2位ノルウェー、3位フィンランド、4位スウェーデンと、上位は北欧諸国が続き、日本は153カ国中121位という過去最低の結果だった。
なぜ、日本は世界と比較して女性の活躍が進んでいないのか。日本政府は女性活躍の推進を最重要課題の1つとして掲げるほか、企業や社会における意識の醸成、制度などの環境整備も徐々にではあるが整いつつある。だが、それもまだ十分ではないということだろう。最近、こうした女性活躍の推進を阻むものとして注目されているキーワードがある。それがアンコンシャスバイアスだ。
無意識のうちに生じる物の見方や捉え方の偏りのことで、中でも「男性は家事が苦手」「女性は仕事より子育て優先」「○○は男性の仕事で女性には向かない」などの性別によるバイアスは日本でも根強く残る。自覚がないだけになかなか排除が難しく、しばしば女性の活躍を阻む“見えない壁”にもなる。職業に対するバイアスもその1つで、「男性は理系、女性は文系が得意」のような固定観念を持つ人はいまだに多く、男性が少ない、女性が少ないといった男女比に偏りのある職種が数多くある。
IT業界のジェンダーギャップの解消を目指すスタートアップWaffle
技術職は、顕著な例といえるだろう。17年のOECD(経済協力開発機構)の調査における大学のSTEM(理系)分野の女性割合を見てみると、工学や数学系で日本は加盟国中最下位という結果が出ている。これは将来の職業選択にも直結しており、技術者の男女比に大きな影響を与えている。
その中でも多くの技術者が働くIT業界は、成長著しい分野だけに女性技術者の割合の少なさが課題となっている業界の1つだ。IT分野のジェンダーギャップを解消することを目指すスタートアップWaffleの共同代表である田中沙弥果氏と斎藤明日美氏は「IT業界における現状の男女比が無意識バイアスとなって、IT職を目指す女子生徒が依然として増えにくい状況にある」と話す。
今や次世代を担う子どもたちにとって、ITリテラシーやプログラミング的思考は必須スキルになっている。小学校でプログラミング教育が始まり、GIGAスクール構想によって小中学生に「1人1台端末」も配布されるが、それだけでは日本のIT業界が抱えるジェンダーギャップを解消していくことは難しいかもしれない。

1991年生まれ。2017年NPO法人みんなのコード入職。文部科学省後援事業に従事したほか、全国20都市以上の教育委員会と連携し学校の先生がプログラミング教育を授業で実施するための事業を推進。19年にIT分野のジェンダーギャップを解消するために一般社団法人Waffleを設立。20年には日本政府主催の「国際女性会議WAW!2020」にユース代表として選出。「SDGs Youth Summit 2020」若者活動家選出。情報経営イノベーション専門職大学 客員教員。20年Forbes JAPAN誌「世界を変える30歳未満30人」受賞
(撮影:尾形文繁)
田中氏は、公立学校のプログラミング教育を支援するNPO法人を通じて、プログラミングやIT職に対する子どもたちの志向が、年齢とともに大きく変化することに気づいたという。