なぜ、日本には「女性の研究者」が少ないのか、そこに存在する壁とは? 女子中高生「理系進学」応援する取り組みを取材

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Path to Science for Girls(以下、PSG)という女子中高生支援プロジェクトをご存じだろうか。「リケジョ」という言葉はもはや浸透しきった感があるが、このPSGはまさに全国の女子中高生に対して、最先端のサイエンスを研究している女性の先輩たちの姿を紹介し、自分の進路や将来の目標などについて広い視野を持ってもらうように支援する取り組みだ。いったい、PSGはどのような団体で、どのような活動を行っているのか。PSG代表である東京大学医学系研究科教授の山本則子先生と、同副代表で慶応大学経済学部教授のグレーヴァ香子(たかこ)先生に話を伺った。

「学術領域」で活躍する日本の女性を増やしたい

「女子だから」「地方出身だから」「自分にはこれは無理」「女子が理系なんて」……。そんな思い込みで、いつの間にか将来の選択肢を狭めてしまう。そもそも、その思い込みも周囲からの決めつけによって刷り込まれたものかもしれないのに、早い段階で自らの可能性に限界をつくってしまう。そんな女子中高生は少なくないのではないだろうか。

そんなとき「やりたいことが最前線でできる場所にいる未来の自分」をイメージすることができれば、どうなるだろう。実際に今社会で活躍している先輩たちの姿を見て、将来の自分を想像するのだ。そうすれば、これまで自分が考えていた以上の世界が目の前に広がり、自分のやりたいことや将来の目標について、より広い視野で考えることができるだろう。

PSGは、まさにそのような制限から女子中高生たちを解き放ち、彼女たちの将来の可能性を広げるためのプロジェクトだ。中でも、最先端のサイエンス研究をしている女性の先輩を紹介することで、女子中高生たちが、性別に関係なくどこまでも高い目標を持っていいこと、そして、1人ひとりが目標を達成できる力を秘めていることを知ってもらうこと、そして、学術の領域で活躍する日本の女性を少しでも増やすことを目指している。

PSGは、フルブライト奨学金など米国務省の人物交流プログラムに参加した大学教員や高校教員ら、女性の同窓生の有志グループによって設立され、在日米大使館が後援している。PSG代表で東京大学医学系研究科教授の山本則子先生が次のように語る。

山本則子(やまもと・のりこ)
Path to Science for Girls(PSG)代表。東京大学医学系研究科 健康科学・看護学専攻教授。専門は老年看護学・在宅看護学。山口県出身。1986年東京大学医学部保健学科卒業、看護師の臨床経験ののち、91年同大学大学院保健学専攻修士課程を修了。95年にカリフォルニア大学サンフランシスコ校看護学部博士課程を修了(PhD)。東京大学助手・講師、千葉大学助教授、東京医科歯科大学教授を経て2012年より現職
(写真:PSG提供)

「今から3年前に、在日米大使館からフルブライト奨学金の同窓生に対し、社会貢献活動を行うなら支援したいというお話がありました。そのとき、私たちが持っていた問題意識は女性の社会進出をもっと推進したいというものでした。中でも学術の領域で活躍する日本の女性たちを少しでも増やしたい。そうした思いのもとグレーヴァ先生ら有志メンバーたちとともに2021年からスタートしたのがPSGです」

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