なぜ、日本には「女性の研究者」が少ないのか、そこに存在する壁とは? 女子中高生「理系進学」応援する取り組みを取材

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そう話す山本先生は山口県出身。中学卒業直前まで山口で過ごしたのち、東京に転居。そこで地方と都会には、情報格差や意識の違いが存在することを実感した。高校時代は、生き生きと勉強し、さらなる高みを目指して進んでいく、数多くの女子の友人や先輩たちと身近に接しながら、とくに気張ることもなく、大学進学を考えることができた。

「女の子だから理系を選ばないほうがいい、自宅から通える大学にしたらいい、そんなに頑張らなくていい。そんなメッセージが今の日本の女子中高生の周りにはあふれています。しかも、地方では実際に学術の最先端で活躍する女性のロールモデルを見つけにくい。私たちPSGの活動に触れることで、とくに地方の女の子に伸び伸びと自由に進路を選びとって、人生を切り開いていってもらいたいと思っているのです」

一方、グレーヴァ先生は神奈川県の出身だが、一生続けられる仕事に就きたいと思っていたものの、将来の進路について思い悩む時期があったという。

「高校時代は反抗期でもあり、バレーボールばかりやっていました。勉強では、数学は大切だとはわかっていましたが、ちょっとサボったらついていけなくなり、3年間ひそかにつらい思いをしました。しかし、大学入学後、高校数学とは違う数学(位相数学)と出合い、これなら一からやれると思ってやってみたらうまくいったのです。大学の数学は言葉です。実は国語力と想像力があると大学数学ができるようになるのです。大学院に進学することは父から反対されたのですが、数学的分析をやっていると、年齢も性別も関係なく、正しいことは正しいと認めてもらえて気分がいい。そこで研究者に挑戦することを決めました」

現在3本が公開されている、女性研究者出演の動画。「ゲーム理論」のほか「神経幹細胞」「高分子化合物」について、それぞれ女性の大学教授が解説をしてくれている。仕事内容を知ることもできる、貴重な動画だ
(写真:PSG提供)

身近に活躍する女性のロールモデルがいる重要性

PSGでは第4回目のワークショップを今年8月7日に開催する予定だ。第1部は「女性研究者の研究を覗こう!」と題し、司会を山本先生が担当、ゲストに地球惑星科学を専攻する東京大学教授の佐藤薫先生を迎えて行われる。佐藤先生は世界でも数少ない南極での研究をしており、壮大なスケールの研究の一旦を動画で紹介してくれているそうだ。今回は、その本人と実際に話すことができるというめったにない機会となっている。第2部では「未来の自分に会いに行こう!」をテーマに女性教員、女子大学生による学びの紹介、大学生活に関する質疑応答などのワークショップが開かれる。オンラインで開催され、参加費は無料だ。主な対象は、女子中高生とその保護者、教育関係者、また男子中高生の参加もOKとしている。前回のワークショップでは60名以上が参加しており、今回も多くの女子中高生たちの参加を期待しているそうだ。

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