「6人に1人が医学部進学」の豊島岡女子が、22年度から完全中高一貫へ 私立文系廃止、全員が高3まで理数学ぶ新体制

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東京の私立中学校では桜蔭と女子学院、雙葉が「女子御三家」として知られるが、近年台頭が著しいのが鷗友学園女子と吉祥女子、そして豊島岡女子学園の3校からなる「新御三家」だ。豊島区にある豊島岡女子は、私大医学部の合格実績は全国でもトップクラスで、2022年度の医学部進学者は56人。医学部の延べ合格者数は現役だけで136人、既卒者を含めると200人を超えた。同年度からの新カリキュラムでは探究や理数教育を充実させ、さらなる学びの強化を図る。日の出の勢いを内側から見てきた校長の竹鼻志乃氏に、これまでの歩みとこれからの展望について聞いた。

独自の「T-STEAM」教育をさらに深化

竹鼻志乃氏が豊島岡女子学園の校長に就任したのは、9年前の2013年のことだ。当時から気鋭の躍進校として注目を集めていた同校だが、現在では「女子新御三家」と呼ばれ、従来の女子御三家にも食い込むかという超人気校となっている。竹鼻氏は、優れた進学実績と人気上昇について「理由の1つとして、ものづくりを通した課題探究に力を入れてきたことが挙げられるかもしれません」と話す。

豊島岡女子は、18年に文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)にも指定されている。同校で15年から続けているコンテスト「モノづくりプロジェクト」は21年に「T-STEAM:Pro」と名称を変えたが、他校生も参加して科学的思考に挑むイベントである点は変わっていない。例えば21年のテーマは「水上で姿勢を制御せよ」。生徒たちは波の上で安定姿勢を保つ構造物を作り、どれだけ重りを落とさずにいられるかを競った。コロナ禍で他校の参加は見送られたが、中1から高2までの109名がエントリーしたそうだ。

「『T-STEAM:Pro』は中学生にとっては難しい内容だといえますが、楽しいと思えるからこそ、生徒たちは自発的に参加して学びます」

2021年の「T-STEAM:Pro」の様子。各グループが挑戦するたび、会場から歓声が上がった

ものづくりを通して、持っている知識を実際に使ってみる経験や、試行錯誤する経験をしてほしいと語る竹鼻氏。「本校には理工系が好きな生徒が多く、教員もそれに応える形でいろいろな取り組みを行っています。学校として進路を誘導することはしてはいけませんが、いい刺激になるような材料は用意してあげたい。文系と理系を分ける考え方はすでに古いものだと思います」と続ける。

こうしたメッセージを強く打ち出すのが、22年度からの中高一貫化と新カリキュラムの実施だ。高校入学時点での生徒募集を停止し、さらに私立文系コースを廃止。全生徒が高3まで理数科目を学ぶ体制とした。

前述の「T-STEAM:Pro」は希望制で取り組むものだが、中学ではそれに先駆けて「T-STEAM:Jr.」という特別活動を実施している。高校の授業として本格的な課題探究に接続する際は、高校からの入学者がそろったところでグループ分けを行い、探究リテラシーの基礎を示してから、グループでの探究活動に進める必要があった。いわば高入生の理解を「待つ」期間があったわけだが、中高一貫化でこうした足踏みの時間もなくせると竹鼻氏は語る。

「私自身も豊島岡女子の高入生だったので複雑な気持ちもありますが、中高一貫化でより深い学びを提供することができるようになります。情報処理能力や理工系の基礎力もさらに高められるでしょう。新体制で学んだ生徒たちは、大学入学共通テストが変わっても問題なく対応できると考えています」

メリットを語ったうえで、同校の中学受験を目指す家庭にとっては、必要な対策に変化はないと説明した。

校長の竹鼻志乃氏。自身も豊島岡女子のOGであるため、自由闊達な校風も身をもって感じてきた
(撮影:梅谷秀司)
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