猛暑に見舞われた夏だった。日本では、今年も電力需給が厳しい東京電力管内では電力の安定供給を維持するために節電が要請されたほか、冷房使用が本格化する前の6月には大手電力各社が電気料金を値上げした。昨年、世界的な燃料価格高騰で規制料金の上限を上回る調達コストを強いられてきたことを是正するためだが、電力会社への厳しい見方も相次いだことは記憶に新しい。
一方で、歴史的な急騰急落劇を昨年から演じ続けているのが欧州のエネルギー市況だ。ウクライナ戦争勃発で欧州天然ガス(オランダTTF)は昨夏には1メガワット時当たり345ユーロと平時の30倍という空前の水準に達した。ドイツ電力先物価格(1年物)も1メガワット時あたり985ユーロをつけた。日本で一般的なキロワット時と日本円に換算すると1キロワット時当たり150円。同時期の日本の年度物先物価格は35円だったので、その約4倍の価格をつけたことになる。
市場メカニズムで安定供給図る欧州
欧州では1990年代後半から電力とガスのエネルギー市場の自由化が順次進み、日本より13年早い2003年には小売り部門の完全自由化がなされた。エネルギー価格の急騰急落は市民生活を直撃するが、欧州当局は環境エネルギー政策として市場機能を重視して、安定供給と脱炭素を追求する姿勢を鮮明にしている。市場参加者の経済合理的な行動を促して最終的な需給均衡と環境分野の進展・目標達成を図っている。
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