資産価値の測定には時価評価と簿価評価がある。特定の時点における市場価格で洗い替え、実勢価格をつねに認識するのが時価評価。それに対して資産購入時の価格で認識するのが簿価評価である。金融市場では、保有する資産に市場価格があれば、つねに時価評価をしておくのが通例だ。
筆者はクレジットアナリストを長くやってきた。実勢がつねにわかったほうが健全な会計で、リスクを詳らかにする保守的な処理だと長年にわたって信じ、クレジットリスクを見極める礎だとも思ってきた。しかし、それ一辺倒でよいか。柔軟に考えることも必要かもしれない。
健全な資産でも時価評価でリスク顕在化も
まず3月に起きたアメリカのシリコンバレー銀行(SVB)の破綻が正しかったのか。大口預金が多く、「ウェブ3.0」のトレンドに乗る同質の預金者ばかりで構成され、預金者に期待される「大数の法則」が働かず、集めた短期資金を長期資産に投資し、解約リスクに一切備えていなかった――。
数々の問題を含め、保有資産の9割を満期保有債券と分類し、それが放置されていたことに加え、保有資産が市場での売買にひも付く付番を有していなかった(すなわち即座に売却が出来なかった)など愕然とする初歩的なミスも指摘されている。監督不行き届きの最たる例で、SVBはあぶり出されるべきリスクを有していたといえる。
しかし、SVBが運用していた投資先は住宅ローン担保証券(MBS)や米国債だったと知られている。そのため、評価損こそ出るが、実質の価値は高かったといえる。金利が急激に上がると逆ザヤになるのは避けがたいリスクだが、実質健全な資産なので、資産への打撃は本質的なものではなかった。
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