車検整備においても、2021年にトヨタ系列の15社16店舗で速度計の検査を省略するなどといった不正があったことが判明している。2022年にはホンダ系列でも不正車検が発覚し、東京都内の一部店舗が自動車整備事業の指定を国土交通省から取り消されている。車検や板金における個別の不正行為は、もはや枚挙に暇がない状況にあるわけだ。
自動車、整備・板金、損保の各業界がときにもたれ合い、不正行為が水面下で横行するという状況で、大きな懸念の一つが自動車保険全体の保険料への影響だ。
保険料の”過払い金”が発生している可能性
ビッグモーターの不正問題では、保険料計算の目安となる「参考純率」を決める損害保険料率算出機構が、「不適切な請求が判明したケースについては保険会社にそれらの報告を求め、参考純率の算定に反映」する方針を示している。不正の規模によっては保険料の“過払い金”が発生している可能性があるわけだ。
一方で不正請求の規模は、「ビッグモーターで年間数億円とみられ、保険料への影響は平均で数十円程度ではないか」(大手損保役員)との見方がある。そのため、大手損保各社では保険料への影響は限定的と見越していたものの、完成車メーカーの系列会社をはじめとして今後不正請求が相次いで発覚するようなことになれば、その影響はもはや無視できなくなる。
ビッグモーターの不正問題をきっかけにして、自動車修理をめぐる「パンドラの箱」が開いてしまった今、騒動に群がるようにして国会議員たちも大きな関心を示している。かつて、公正取引員会からカルテルの疑いで注意を受けた「修理単価(レバーレート)」についても、不正請求の背景にあるのではと問題視する声が政府・与党内で急速に強まっていることもあり、火の手は収拾がつかないほど広がり始めている。
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