苦境のUUUMが「広告会社へ身売り」を決めた必然 前期に赤字転落、創業者らが保有株売却で合意
5月中旬にフリークアウトから株式売却の提案を受けた鎌田氏は、その時点ですでに「適切なパートナーに対してであれば株式を売却する意向を有していた」という。その後6月1日付でUUUMの代表取締役から取締役に退いている。この人事をめぐって業界関係者の間では、鎌田氏の経営に対するモチベーション低下を指摘する声も上がっていた。
リリースでは、今回のTOB成立後に鎌田氏は取締役を辞任することで合意していたものの、UUUM側からの提案で取締役辞任後も「ファウンダー兼名誉顧問」として関係を維持することになったと記されている。一方、フリークアウト側も「業界の先駆者でもある鎌田氏にはぜひ残ってほしいとお願いした」(同社IR担当者)という。
フリークアウトはなぜ鎌田氏を引き留めたのか。
「正直なところ、クリエイターにとって今、UUUMに所属するうまみはない。もし鎌田さんがUUUMから離れれば、クリエイターもUUUMから離れてしまうリスクは十分にある」
そう話すのは、UUUMの元社員だ。鎌田氏は専属クリエイターと頻繁に会食に出かけるなど、クリエイターファーストの姿勢が強く、「古参のトップクリエイターを中心に全幅の信頼を置かれている」(同)。
鎌田氏に課された「条件」
光通信で経験を積んだ鎌田氏は、人気YouTuberのHIKAKIN氏との出会いをきっかけに、2013年にUUUMを立ち上げた。創業から10年経った今もなお、トップクリエイターと強い関係性を持つ同氏の影響力は大きいようだ。
実は今回のTOBにおいて、名誉顧問への就任以外にも、鎌田氏とフリークアウトの間で合意を結んだ事項がある。
具体的には、UUUMと所属クリエイターとの現在の関係が維持・継続されるように商業上合理的な範囲で努力することや、TOBの決済開始日から2年間はクリエイターの引き抜きや契約関係終了の勧誘をしないこと、などだ。
フリークアウトからすれば、鎌田氏との合意によって少なくとも2年間は、トップクリエイターのUUUM離れをさほど心配する必要はなくなったわけだ。しかし、こうした合意を結ばざるをえない状況こそが、UUUMが抱える課題を如実に表しているともいえる。
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