日本の女子大初、注目の「奈良女子大学工学部」開設2年目の手応えと課題 女子を引きつけた「人と社会のため」という視点

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西日本唯一の国立女子大学である奈良女子大学が、日本の女子大史上初の工学部を設置して今年で2年目となる。わが国の理工学分野別の入学者に占める女性比率は、理学分野が30.2%、工学分野がわずか15.2%(文部科学省「令和3年度学校基本調査」)。ジェンダーギャップが問題となっている中、女性エンジニアの養成拠点を目指す改革が大きな注目を浴びているが、現在どのような手応えや課題があるのか。奈良女子大学工学部長の藤田盟児氏に話を聞いた。

世界の中でも珍しい「女子大の工学部」をつくった訳

2022年4月、日本の女子大史上初の工学部を開設した奈良女子大学。同大工学部長の藤田盟児氏は、その背景について次のように語る。

「国立女子大学の本来の役割は、女性の社会進出をサポートすることにあります。理系に関しても、本学の理学部では院生や研究者の輩出に力を入れて実績を上げてきました。また、家政学部を改組した生活環境学部には工学系の教育を行っている教員も少なくないため、工学部をつくりたいねという話も以前からあったんです。生活環境学部だけで工学教育を行うには難しい面があったため、16年にお茶の水女子大学と共に『生活工学共同専攻』という工学系の大学院を設置しました。そうした中、奈良教育大学と法人統合(※)の協議が始まったことを機に、奈良教育大学の情報系や技術系の教員と力を合わせれば、工学部をつくれるのではないかと、18年から具体的に検討を始めたのです」

※22年度より、奈良女子大学と奈良教育大学は奈良国立大学機構に統合

藤田盟児(ふじた・めいじ)
奈良女子大学教授/工学部長
1960年愛媛県生まれ。東京大学大学院工学研究科建築学専攻第1種博士課程修了。博士(工学)。奈良国立文化財研究所研究員、名古屋造形芸術大学助教授、広島国際大学教授を経て2016年より奈良女子大学教授。22年4月に工学部長に就任。専門は日本建築史、建築意匠。一級建築士。文化庁文化審議会第2専門調査会委員、奈良県・兵庫県・山口県文化財審議委員、福山市・呉市・竹原市・廿日市市・高梁市の伝統的建造物群保存地区審議委員ほか多数。共著に『和室礼讃』(晶文社)、『日本建築様式史』(美術出版社)、『中世的空間と儀礼』(東京大学出版会)など多数

女子大の工学部は世界の中でも珍しい。現在、海外で女子大に工学部があるのは韓国の梨花女子大学のみで、女性とエンジニアの結び付きは世界的に見ても弱いと藤田氏は語る。

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