日本の女子大初、注目の「奈良女子大学工学部」開設2年目の手応えと課題 女子を引きつけた「人と社会のため」という視点

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一方で、課題もある。ダイバーシティーの観点からも、文系の女子学生にも入学してほしいのだが、圧倒的に理系の入学者が多い。

「1期生は1名、2期生も1名文系コース出身者がいましたが、よくよく話を聞くと中身は数学が大好きな子だったりします。入試も定員の3割は大学共通テストを利用せず受けられる『総合型選抜探究力入試』にしたり、文系学生のためにリメディアル教育(理数科目の補習)を行ったりと工夫しているのですが、なかなか来てもらえない。ここは課題ですね」

奈良女子大学は1期生が卒業するまでに工学部の大学院を設置する方針で、同じく国立のお茶の水女子大学も、24年には共創工学部(仮称)を開設する計画だ。東西の名門女子大において、女性エンジニアの養成は本格化するが、社会も変わる必要があると藤田氏は指摘する。

「高校1年生の段階では文理の男女比に大きな差はなく、2年生~3年生にかけて一気に理系から女子が消えていくと聞きます。それは将来の仕事を考える際に、保護者を含む周囲のバイアスが大きく働くからでしょう。しかし、IoT革命によって、生活の隅から隅まで工学の知識が必要な社会に変わってきており、今後工学は社会のベースになっていくはずです。だからこそ、本学はいろんな分野とつながって考えることができる女性エンジニアを育てたいし、すべての分野に彼女たちを送り込みたい。そのためには、やはり本人がやりたいことをどこまでも追求できる社会に変換させることが必要だと思います」

教育も、個性を大切にして主体性を育むことが重要だという。「日本全体の傾向として、自主的に動ける子が少ないと感じます。うちの学生を見ていても、主体的に学べる子は半分以下」と藤田氏は言い、こう続ける。

「大学が提供する企画に参加することは自主的とは言えません。うちの工学部も授業外でプログラムや製品を自ら生み出す学生などはいますが、受け身の子はまだ多い。私たちに何かを要求してくるくらいの学生が増えることを期待していますが、まだまだ少ないです。そこには日本の教育が背景の1つにあると感じます。今後、小学校からの教育は、何を学ぶかは子どもに任せ、学び方も大人がコーチングのような形でサポートしていけばいい。そうすれば、多少偏ったとしても、興味がある部分の学びは大きく前進するはず。そして一人ひとりが得意分野の課題を解決していけば、山積する社会課題も解決すると思うのです。イノベーション社会に適応していくには、そうした個別撃破的な考え方が必要ではないでしょうか」

(文:國貞文隆、写真:奈良女子大学工学部提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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