異動志願者ゼロの教育困難校に飛び込んで見た「大人の都合」に翻弄される生徒たち 飲酒に喫煙、進む統廃合で生徒はどこへ行く

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「教員の超過労働も問題になり、部活動顧問をなくす動きなども活発化していますが、学校には『人格の形成』という忘れてはならない役割もあります。勉強を教えるだけではなく、行事や部活動を通して得られる経験が子どもたちに与える影響は大きいはずですし、それこそが教員という仕事の魅力だと私は感じています」

教育困難校での11年を経て、藤崎さんはこうした子どもたちにとって真に魅力のある学校は「楽しいと思えること」だと答えた。

「うちへ入学してくる子は、まず学校にいい思い出がない子がほとんど。公立中学校は生徒の学力差がとくに激しいので、うちに来るような生徒は最後まで放っておかれたり、叱られ続けたりしてきたはずです。彼らにとって、教員は『敵』なのです。またその保護者も、学校にネガティブな印象を持っていると感じることが多かったです。この悪循環を断ち切るには、今いる生徒が学校を『楽しい』と思えることが何より大切だと考えます」

学校でできるだけ多くの体験をし、自分の子どもにその思い出を1つでも「楽しかったよ」と語れるようになったなら、それは教育の成功といえるかもしれない。

「教員志望者は減り続けています。教員の負担を減らせという声も大きいですが、学校が本来子どもたちに与えられるはずのチャンスを削ってしまうのは、子どもたちにとって大きな損失ではないでしょうか。真に必要なのは、子どもの学ぶ機会を奪う改革ではなく、教員の負担にしっかり応えられるだけの手当をはじめとした制度づくりではないでしょうか。『正当な手当が出ないからやりたくない』という人は多いはずです」

単純に労働時間が短縮されれば、現状の超過労働は解決されるだろう。だが藤崎さんは「教員を志した人は多かれ少なかれ、子どもたちに何かを与え導きたいという希望を持っているもの。子どもたちのためなら、と頑張れる人がたくさんいるのは事実です。その気持ちに“タダ乗り”するのではなく、正当な対価を払うことで、教育はもっとよくなると信じています」と強調した。

藤崎氏によれば、現在藤崎氏の学校には、若い教員を中心に「生徒たちの希望をできる限り叶えたい」という新しい教員が増え始めているという。学校は単に勉強を教えるだけの場ではなく、子どもの人生を変えるターニングポイントが各所に埋まっている場でもある。学ぶ機会はすべての子どもたちに開かれるべきであり、子どもではなく「大人にとって魅力的」なだけの改革には疑問が残る。

(文:藤堂真衣、注記のない写真:ふるさと探訪倶楽部 / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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