人間にできてChatGPTにできぬ「意味理解」の深層 『言語の本質』秋田喜美氏、今井むつみ氏に聞く

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『言語の本質』著者の今井むつみ氏、秋田喜美氏
(右)今井むつみ(いまい・むつみ)/慶応大学教授。1989年慶応大学博士課程単位取得退学。94年米ノースウェスタン大学心理学部Ph.D.取得。専門は認知科学、言語心理学、発達心理学。著書に『ことばと思考』『ことばの発達の謎を解く』など。(写真:中央公論新社)
(左)秋田喜美(あきた・きみ)/名古屋大学大学院准教授。2009年神戸大学大学院文化学研究科修了。博士(学術)。大阪大学大学院言語文化研究科講師を経て、現職。専門は認知・心理言語学。著書に『オノマトペの認知科学』。
対話型AI(人工知能)のChatGPTは、人間の言葉を操ることができる。では、このAIは言葉の意味を理解しているのか。そもそも、人間はいかにして意味を理解していくのか。
言語の本質-ことばはどう生まれ、進化したか (中公新書 2756)
『言語の本質-ことばはどう生まれ、進化したか』(今井むつみ,秋田喜美 著/中公新書/1056円/304ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──ChatGPTは、言葉の意味を理解しているといえますか。

今井 理解をどのように捉えるか。それによって答えは変わる。ただ少なくとも、私たち人間と同じような形で意味を理解していないことは確か。一つひとつの単語が外界の何に対応して、どういう意図をもって使われているか、ChatGPTは考えることができない。「記号接地」をしていないからだ。

──記号接地とは何でしょう。

今井 私たちがイチゴについて想起するとき、その見た目だけではなく、甘い香り、食感、酸っぱさ……こうした感覚が渾然一体となって脳裏に浮かぶ。これが記号接地のできている状態だ。

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