[Book Review 今週のラインナップ]
・『池崎忠孝の明暗 教養主義者の大衆政治(近代日本メディア議員列伝 6)』
・『市川房枝、そこから続く「長い列」 参政権からジェンダー平等まで』
・『つなぐ 100年企業5代目社長の葛藤と挑戦』
・『古本屋は奇談蒐集家』
評者・関西大学客員教授 会田弘継
劇的な人生だ。夏目漱石門下の文人から政論記者、メリヤス業者、軍事評論家を経て帝国議会議員となるが、戦後A級戦犯容疑で収監、釈放され58歳で逝った。「メディア議員」というキーワードを軸に描かれる生涯は、個人の一代記を超える「近代日本の精神史」だ。評伝文学としても傑作と言ってよい。
漱石門下からA級戦犯容疑者に 「メディアの論理」で波乱の生涯
赤木忠孝(ただよし)として1891年岡山県に生まれた。三菱財閥に訴訟で挑んだ鉱山起業家の父は、忠孝の旧制中学時代に莫大な負債を抱えて敗訴、一家離散となる。支援者を得て旧制六高に進んだが、その支援者も事業失敗で自殺。大阪のメリヤス業者の養子となり、池崎姓を得た。序盤から波乱の多い人生である。
六高時代に児童文学者・鈴木三重吉から文才を認められ、その紹介で漱石門下となる。赤木桁平(こうへい)の筆名で新聞に発表した論文「『遊蕩文学』の撲滅」(1916年)が文壇に一大旋風を巻き起こした。
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