美濃市が「医療者と連携」し、市を挙げて不登校対策に取り組み始めた訳 学校の非公式ルール「かくれ校則」も見直す方針
島田氏もこの現状について「学力を身に付けさせるために、教員が子どもをコントロールする方法を取っていた」と捉えており、今後は授業のあり方も問い直していくという。
「今回の教職員向けの研修でも、『よかれと思ってやってきた指導が、子どもだけでなく教職員自身も苦しめていることに気づいた』といった感想が多く、今後の教育改善を考えるよい機会になったと思います。本市では今年度、横浜創英中学・高等学校の工藤勇一校長先生にも3回の講演をお願いしており、自ら学ぶ子を育てるための授業や行事、係活動なども模索しているところです。また、制服の問題や部活動の地域移行も並行して取り組んでおり、市を挙げてのさまざまな改革も不登校の起こりにくい学校づくりにつながればと考えています」(島田氏)
こうした同市の不登校対策に、加藤氏も期待している。
「以前、私が関わったほかの学校で、1つの学年があるルールをやめたところ、1年も経たないうちに全学年でそのルールを廃止することになりました。教職員の方々が問題意識を持てば変わるのです。今回、研修後に若手の先生方から『かくれ校則』をやめたいがどうしたらいいかという相談を受けました。現場の先生方も従来のやり方に違和感があって何とかしたいと考えていらっしゃるので、きっと改革は進むと思います。全国で参考にできるようなモデルケースをつくれるようにしたいと考えています」(加藤氏)
この不登校対策事業は、3年間にわたり実施する方針だ。今後の課題と展望について、島田氏は次のように語る。
「教職員が具体的にどう指導を変えていくか、保護者の意識をどう変えていくかは課題です。また今回、自治体の規模が小さく新規事業が認められにくい中、市長にご理解いただき何とか50万円の予算を認めていただきましたが、医療者の方にご協力いただくには十分な金額だとは思っていません。こうした課題も踏まえ、成果を出していきたいと考えています」
文科省が掲げる不登校対策「COCOLOプラン」において医療との連携は明記されていないが、同市の取り組みは、各関係者がつながり子どもたちに寄り添っていくという同プランの方向性と一致するものだろう。「かくれ校則」の見直しも、同プランが目指す学校の姿「みんなが安心して学べる場所」をつくっていくうえで、全国の学校が参考となるアクションではないだろうか。同市の学校がどう変わっていくのか、今後も注目したい。
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(文:編集部 佐藤ちひろ、注記のない写真:美濃市教育委員会提供)
東洋経済education × ICT編集部
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