「嘘も方便」で小論文…何を書けば受かる? 「根っこから考える」子どもが受かっている

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まずは、愛知医科大学の2次試験で問われた問題を見てみよう。これも私の教え子からの情報である。与えられた2枚の写真(絵)を見ながら面接官の質問に答えて行くというものだ。

写真の1枚目。子どもが歯ぎしりをしながら、鉛筆をグーで握り締め、勉強に行き詰まりを見せているシーンである。もう1枚は、その子どもの有様を見ているのか、父親がしかめっ面で拒絶反応を示しているシーンである。これらの写真を見ながら、面接官により2つの質問がなされた。初めに「この子どもの家庭環境はどういう状況か」。次に「学生時代について述べよ」というものだ。

「暗い絵柄」に見出さなければならないもの

教え子はなかなか優秀で、大すじ次のように答えた。

1問目:「この子どもの家庭環境は、勉強を強制される状況で、自ら進んで勉強に取り組むという姿勢は育まれていないと考えられます。子どもが歯ぎしりをし、鉛筆を正常な握り方ではなくグーで握る姿に、それは現れています。父親は、恐らく優秀な人だと推測されます。彼は勉強はできて当たり前という考えの人で、子どもが自分の理想像と程遠いことを受け入れられず、拒絶していると思われます」

2問目:「この子どもは今、思春期で多感な時期であり、勉強以外にも、部活の上下関係、恋愛など様々な悩みを抱えていることが想像できます。子どもの表情にその葛籐がにじみ出ているのがわかります」

なかなかバランスのとれた答えである。2番目の質問の学生時代というのは、私は受験生自身の学生時代について触れるものと考えたが、教え子によればそうでもないようだ。

実はこの質問に近いものを私は目にしたことがある。「バイオリンと少年」という心理学の試験で、バイオリンを弾くことに挫折しかけていると思われる少年の絵を見せ、被験者に即興で「短い物語」を作らせるというものである。

専門的にはTAT(絵画統覚検査)という検査で、絵を読み解く作業の中でその人の心理状態を探り、深層心理を読み解くテストである。教え子が正規合格したことを考えると、先に示した回答で大きな減点はなかったのであろう。

それは、この種の負の側面の強い絵柄に対し、まず状況を客観的に分析しているのが良い。また、この親子関係を修復するにはどういう解決策があるかをうかがわせる主張もなかなかのものである。おそらくその2点が評価されたものと推測される。

小林 公夫 一橋大学博士、作家

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こばやし きみお / Kimio Kobayashi

専門は医学と法、生命倫理学。現在は生殖医療や実験的治療行為など先端医療の研究に従事している。研究の傍ら、医学部受験生の指導にあたり、医学部受験予備校インテグラ、医学部&東大専門塾クエストで、医学概論、医学部生物学、医学部小論文・面接などを指導。著書多数。代表作にシリーズ累計21万部突破の『「勉強しろ」と言わずに子供を勉強させる法』『新「勉強しろ」と言わずに子供を勉強させる法』「オトバンクFeBe版勉強しろと言わずに子供を勉強させる法」(PHP研究所)、『わが子を医学部に入れる』(祥伝社新書)などがある。『医学部の面接 [3訂版](赤本メディカルシリーズ)』、『医学部の実践小論文 [改訂版](赤本メディカルシリーズ)』(教学社)は医学部受験生のバイブル。医学部入試に関する情報はオフィシャルサイトにも掲載している。

 

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