西武、ハリポタは沿線振興の「魔法の杖」になるか ムーミンやアニメ、エンタメ要素で相乗効果

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池袋駅も豊島園駅も看板からトイレにいたるまであらゆる場所に、ハリー・ポッターを想起させる意匠が凝らされている。こうしたデザインを探し出すのも楽しそうだ。

西武 駅 ハリーポッター トイレの表示
駅のトイレの表示にもハリー・ポッターの世界を想起させる意匠が凝らされている(記者撮影)

さらに、ハリポタの主要キャストを大胆に描いたラッピング列車の運行も始めた。1編成ではなく3編成を導入するという気合の入れようだ。

スタジオツアー東京の開業に先立つ5月16日、池袋駅と豊島園駅のリニューアル記念式典が豊島園駅前の広場で行われた。西武ホールディングスの後藤高志会長、小池百合子東京都知事、ワーナー ブラザース スタジオツアー東京のトーベン・イェンセン・ゼネラルマネジャーらが出席した。

イェンセン氏は、池袋駅の1番ホームの中ほどに設置された時計は、キングスクロス駅の「9と4分の3番線」の時計のレプリカとして制作して西武に寄贈したことを明かし、「このようなラッピング列車は本場イギリスにもない。東京が初めてだ」と話した。

池袋駅 9 4/3番線 時計レプリカ
池袋駅1番ホームに設置された「9と4分の3番線」の時計のレプリカ(記者撮影)

記念式典に続き、豊島園の駅ホームでラッピング列車の出発式が行われ、駅長とともに後藤会長や小池都知事も、魔法の杖を振って出発の合図を送った。出発式後の囲み取材で、後藤会長は、魔法の杖を振る仕草に「“前進”の意味を込めた」と話した。コロナ禍の3年間で大きく傷ついた西武HDの業績は、魔法の杖を振ればたちどころに回復するというものではない。「業績回復には社員一人ひとりがしっかりと努力していくしかない。社員たちはこの3年間で強くなった。そこで蓄積したパワーをこれから存分に発揮してほしい」。

としまえんとは違い、スタジオツアー東京の運営で西武グループが得られるのは敷地の賃料収入のみだ。しかし、ハリポタの施設ともなれば国内のみならず海外からも多くの客がやってくる。西武にとっては施設への交通アクセスに使われる鉄道の運賃収入が得られる。それだけに、今回の開業は西武にとってもビジネスチャンスとなる。

沿線に広がるエンタメ施設

ハリポタ以外にもこの数年で西武沿線にはエンタメ関連の施設やアトラクションがずいぶん増えた。西武園ゆうえんちでは人気のライドアトラクション「ゴジラ・ザ・ライド」に加え、7月14日からは「ウルトラマン・ザ・ライド」も加わる。西武グループ以外の施設では飯能に「ムーミンバレーパーク」があり、アニメ制作スタジオが集積する練馬区ではアニメ関連の取り組みを継続的に行っている。それぞれの施設を訪れる客が増えれば運賃収入が増える。

各施設は点と点でしかないが、それが鉄道によって1つの線でつながれば、1つの施設を訪問した後に西武線でほかの施設に向かうといった形で相乗効果が高まる。地方から上京した客は、日帰りせず西武線沿線に宿泊するかもしれない。それによって地元に落ちるお金は日帰り旅行とは比較にならない。西武にはぜひ沿線全体の振興につながるような取り組みを期待したい。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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