南極に行った美術教諭が語る「教室を飛び出す学び」と「柔軟な働き方」の重要性 話題の「神山まるごと高専」で新たな挑戦開始

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「柔軟な働き方」が新しい挑戦を後押しする

新しいことに次々と取り組む新井氏だが、「最初から『これができる』とわかっていて始めたことは一つもない」と言う。

「僕の実践はすべて、生徒や教員仲間と対話を重ねながら、一つひとつ形にしてきたもの。そういう過程そのものが、すごく意味のある学びだと感じています。手探りだからこそ、学校外の人から僕自身も学ばなければいけないと思いますし、そこでの出会いや刺激が次の実践につながり学校現場に還元されていくという循環の楽しさもあります」

そうした好循環が可能な理由として、「柔軟な働き方が認められていることも大きい」と新井氏。これまでの在籍校はすべて、新井氏の学校外の活動に理解があった。

実は今、前任校のドルトン東京学園中等部・高等部でもSTEAMアドバイザーとして仕事の一部を継続している。2023年度は、新井氏が開発した2科目を担当。校内の空間をアートで彩る「Our Art」と、プロのクリエーターを講師に招き、映像制作やAR(拡張現実)の活用などを学べる「Media Arts」の授業だ。リモートを基本として現地勤務の教員と連携して授業を行っているが、こうした副業が可能なのは、神山まるごと高専がコアタイムを設けないフレックス制を採用しているからだ。

「本業と両立する力や工夫は必須ですが、すべての教員にこうした柔軟な働き方が認められると、できることが広がり日本の教育はよくなっていくと思います。学校の魅力は、独自の風土やチームワークから生まれるものも大きい。長期で1つの学校に関わり続けながら経験を増やすためには、雇用の枠組みをある程度柔軟にする必要があるのではないでしょうか。神山まるごと高専のように教育畑ではない人が関わる機会も増やすべきでしょう。僕のように1人で複数校を担当するだけでなく、移動しながら働くスタイル、インターンシップや企業との交換留学など、いろいろなやり方がありそうです。公立校も外部人材の活用に限らず、自治体同士の連携などでできることもあると思います」

教員が柔軟に学び働ける環境が整えば、新井氏のように新たな取り組みに生き生きと挑む教員が増え、より創造性にあふれた実践も広がりそうだ。何よりも、そうした教員の姿は、児童生徒たちに「主体的に学ぶとはどういうことか」を示すよき手本となるのではないだろうか。

(文:安永美穂、編集部 佐藤ちひろ、注記のない写真:神山まるごと高専提供)

東洋経済education × ICT編集部

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事