政府の避難指示に振り回される南相馬。それでもパン屋は無料のパンを焼き続ける

政府の避難指示に振り回される南相馬。それでもパン屋は無料のパンを焼き続ける

4月10日の夕刻のこと。福島県南相馬市の中心街にあるパン屋に、自転車でやってきた中学生の少年が入ってきて、こうたずねた。

「ただのパン、ありますか」

店主の只野実さんは、「はい」と言ってパンを手渡しながら、「コーヒーも飲んでいったら」、とコーヒーメーカーが置かれている場所を指差した。そこには、新聞数紙も用意されている。その少年はコーヒーを飲みながら、新聞の記事に見入った。

過半の地域が東京電力福島第一原発から30キロメートル圏内にある南相馬市。4月14日に起きた原発の水素爆発を契機に市外に非難した市民たちは、その後、続々と戻ってきている。一週間前の4月2日には開店している店はほとんどなかったが、この日の町並みをみると、肉屋、書店、ラーメン店、眼鏡店、自動車ディーラー、作業道具店等々、数多くの店が商売を再開していた。

そのなかでも、只野さんが「ふわふわパン工房 バルティール」を再開したのは早かった。3月29日だという。

「会津の娘の家に避難していましたが、避難した人たちが町に戻ってきているという話を聞いて、妻と戻ってきました。原発を恐れる娘には、帰らずにここにいろと泣かれました」と、只野さんは話す。

以後、只野さんは毎日パンを焼いては、避難所にいる人たちに配る日々を送っている。もちろん、代金は受け取らない。来店客にはパンを販売するが、無料のパンも用意している。買えば、無料のパンを1つ、サービスする。

「倉庫の小麦粉が尽きるまで続けますよ」と只野さん。

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