専門家が指摘「学校のSNS炎上」でやってはいけない対応とやるべき準備とは 翌年の入学者数が3分の1に落ち込んだ例も

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生徒の問題行動がSNSで炎上し、学校が対応に苦慮するケースが増えている。記憶に新しい飲食チェーン店での迷惑行為も、動画に関する問い合わせが学校に殺到。校務に多大な影響を及ぼした。過去には、学校がマスコミ対応を誤りさらなる炎上を招いた事例もある。炎上時の学校の適切な対応とは。また、そもそも炎上を防ぐには普段からどのような準備が必要なのか。学校危機管理のパイオニアで、危機管理実務に30年近く携わっている学校リスクマネジメント推進機構代表の宮下賢路氏に話を聞いた。

「裁判に勝って危機管理に負けた学校」はどうなるのか

「炎上対応を誤った学校は、かなりの被害を受けます。ある私立学校では翌年の入学者数が前年の3分の1にまで落ち込みました。ネットやSNSに上がった記事を削除するため1000万円以上を投じましたが効果がなく、今でも上位検索には誹謗中傷の記事が並びます」

宮下賢路(みやした・けんじ)
学校リスクマネジメント推進機構 代表
セキュリティ関連会社、大手危機管理会社を経て2005年に学校リスクマネジメント推進機構(https://www.relief-point.co.jp/)を設立。学校危機管理に特化した専門機関として、弁護士や警察OBなどの専門家とともに幅広い危機管理知識や実践心理学を加味したノウハウを学校に提供する。マスコミ対応や緊急保護者会の実務支援にも定評があり、考案した危機管理研修は東京23区のうち20区の教育委員会に導入されている。著書に『教職員のためのクレームリスクマネジメントの最新技術』(エコー出版)など
(写真:本人提供)

そう話すのは、学校危機管理に特化した専門機関、学校リスクマネジメント推進機構の代表を務める宮下賢路氏。この私立学校は、顧問弁護士が同席した記者会見を開くなどそれなりの対応も取っていたが、なぜこんな事態に陥ってしまったのか。

「この記者会見は、後の裁判が色濃く意識されたものでした。およそ、謝罪の言葉を口にすると不利になるからでしょう。なるべく学校側が責任を負わない言い回しに終始してしまったのです。残念ながら、学校側の誠実さは見受けられませんでした。そこをマスコミに突っ込まれて記事になり、炎上が広がった。その数年後に学校側は裁判で勝訴したのですが、その頃には誰も注目しませんよ。これが典型的な『裁判に勝って危機管理に負けた』事例です」

この事例は10年以上も前のものだが、当時と比べて現在は小中高生のSNS利用率も格段に上がった。NTTドコモ モバイル社会研究所が2022年4月に公表した調査結果によれば、中学生のSNS利用率は90%、小学生高学年は51%にもなる(※1)。記事拡散のスピードはもちろん、児童・生徒のさまざまな言動が一気に世界中に発信される時代とあって、「学校の規模や私立公立、地域にまったく関係なく、すべての学校につねに炎上リスクがつきまとっていると言っても過言ではない」と宮下氏は警告する。

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