子どもがSNS加害者になる「怒りの連鎖」の怖さ 被害だけでなく炎上騒ぎの加害にも注意を

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GIGAスクール構想がコロナ禍で加速し、学校現場はICTを利用した学習に向けた対応に追われている。戸惑う先生たちを尻目に、子どもたちはネットワーク化された世界に適応し、中でもSNSは友だちとの関係を築くうえで重要なツールとなっている。
しかし、SNSはリアルタイムの情報収集、知らない世界や人々とつながるといったメリットをもたらす反面、さまざまなリスクが伴うことも事実だ。警察庁の2019年のまとめでは、SNSに起因する事犯の被害に遭った18歳未満の子どもは過去最高の2095人を記録。さらに、子どもがネット上の炎上騒ぎに乗じて、誹謗中傷の“加害者”になってしまうケースも増えているという。

ネットでは、人を不快にさせてしまう発信が簡単にできてしまう

サイバーセキュリティー関連製品を扱うトレンドマイクロは、ICTをめぐるセキュリティーやリテラシー教育の出前授業を行っている。同社シニアスペシャリストの高橋昌也氏は、小中高の学校の先生がSNSに抱く不安として、①犯罪被害につながるネット上の出会い、②個人情報の漏洩、③生徒同士のトラブル、の3点を挙げる。

「SNSは子どもたちの世界を広げる便利なツールだが、リアル同様にサイバーの世界にも悪意を持った人はいる。不正アプリで個人情報を盗まれたり、連絡先を交換した相手に付きまとわれたり、嫌がらせをされたりすることもあるので、犯罪の手口を知っておくことは重要」と指摘する。

生徒同士のトラブルでは、いじめ以外にも、友だちの写真などを勝手に自分のSNSに載せて公開したことに起因するケースもある。公開した画像、映像が自宅近くで撮影されたものの場合、背景の景色や建物の位置・角度、電柱の街区表示プレートなどから住所を割り出されるおそれもある。

「高校生とのワークショップなどで『夜の遅い時間って何時頃から?』と聞く機会があるのですが、答えにはばらつきがあります」と高橋氏。1つの言葉でさえ、それぞれ解釈やイメージすることは大きく異なる。「ですから、公開されて相手がどのように感じるかどうかは、人によって異なることを理解し、リアルと同様に相手の気持ちに配慮する、相手を思いやる想像力が必要ではないでしょうか。そして、ネットでは人を不快にさせる発信が簡単にできてしまうことを理解してもらうことが欠かせません」と続ける。

炎上騒ぎの加害者になってしまうリスクも

事実、児童生徒のSNS利用をめぐるリスクは、犯罪やトラブルに被害者として巻き込まれるケースだけではない。インターネット上のトラブルに詳しい弁護士の深澤諭史氏は「子どものSNS利用で大きなリスクの1つが誹謗中傷の加害者になってしまうこと」と、加害リスクにも注意を促す。実際にSNSでの名誉毀損をはじめ、子どもが発信者となって引き起こされたトラブルの相談も増えているという。

深澤諭史
服部啓法律事務所 弁護士(第二東京弁護士会) 明治大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。著書に『その「つぶやき」は犯罪です』(共著・新潮社)、『インターネット権利侵害 削除請求・発信者情報開示請求“後”の法的対応Q&A』(第一法規)、『インターネット・SNSトラブルの法務対応』(中央経済社)など(写真:深澤氏提供)

芸能人やタレントの炎上騒ぎに便乗して、あるいは、自らの正義感に駆られて、子どもたちが誹謗中傷にあたるような書き込みをしてしまうケースもあるだろう。

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