専門家が指摘「学校のSNS炎上」でやってはいけない対応とやるべき準備とは 翌年の入学者数が3分の1に落ち込んだ例も
※1 NTTドコモ モバイル社会研究所「SNSの利用上昇傾向 中学生では9割を超える」(22年4月)
電話を取った職員が「自分の見解を述べる」がいちばん危険
では、まさに炎上が起こる局面で学校はどうするべきなのか。ひたすら誠実な対応を取ればよいというわけでもなく、宮下氏は「誠実さにもノウハウが必要」と語る。
「例えば、SNSで炎上している生徒についてマスコミから問い合わせが来た際、電話を取った教職員はまだその内容を知らないかもしれません。しかし、正直に『その件はわかりません』『知りません』などと反応すれば、隠蔽していると勘繰られてネガティブな報道につながるおそれがあります」
批判的な論調ではなくても、学校が事態をまったく把握していないとなれば、「生徒に無関心」「情報共有が遅い」とみられる可能性は大いにある。たとえ学校の管理責任下にないものでも、内容が深刻であればあるほど無責任な学校だと受け取られかねない。宮下氏は「最低でもマスコミ対応の窓口は一本化しておくべきです」と話す。
「電話を取った教職員が自分の見解を述べてしまうのがいちばん危険です。管理職レベルでは状況を把握し対策を練っていたとしても、たまたま対応した教職員がうっかり口にした言葉が学校の見解として広がってしまいます。たとえ事実ではなくても、一度拡散された内容はなかなか訂正されません。軽率なことは言わずに、『担当から折り返します』などと伝えるようにしましょう」
以下は、避けるべき文言として宮下氏が挙げたものだ。いずれも言い訳や保身の意図が見える。
・「そうはおっしゃいますが……」
・「だけど……」
・「でも……」
・「しかしですね……」
・「こちらも一生懸命やっているんです……」
・「ですから……」
・「法的には違反していないので……」
・「こちらも被害者の部分がありますので……」
想定外の問い合わせが来ると、つい焦って希望的観測で発言をしてしまったり、上から目線になってしまったりしがちだ。そのため、事前に学校でマニュアルを作成してある程度の定型文を決めるなど、平時のうちに「想定内」にしておくことが大切だ。
「具体的には、記者会見やマスコミ取材、緊急保護者会におけるQ&A集を作成しておくことをお勧めします。この時重要なのは、できるだけ多くの教職員が参加してあらゆる可能性を考えておくことです。緊急時にはこれをもとに、状況に合わせた肉付けをしていきます」
初動は事実確認を最優先し、情報を一元管理する
一方で、注意が必要になるのが「謝罪」だ。学校側が不用意に謝罪をすることで、2次被害を生む可能性もある。
「例えば、炎上した生徒が実はいじめられていて、無理やり問題行動をさせられていたケースもあるわけです。それを知らずに学校側が一方的に謝罪すれば、その生徒の人権にも関わります。必ずしも迅速に謝罪文をアップすればよいとも限らないのです」
こうしたリアクションよりも優先するべきなのは事実確認だと宮下氏は強調する。
「問題発生時の初動対応の基本は、5W1Hに沿った情報収集です。現状把握もせずに情報発信をしてはなりません。マスコミも社会も、知りたいのは『本当のところはどうなのか』です。実際、炎上を最小限に抑えた学校は、『現在、事実確認を行っています』『いつまでに中間報告をします』と小刻みなアナウンスをしています」

















