「子どもたちを統率できないので、クラス中がわいわいしゃべって授業にならないんです。当然、保護者からクレームが寄せられますが、その対処法もわからない。毎日何人もの保護者と何十分も電話対応をして、さらにつらくなっていく。こうした負のループにはまって、休職に追い込まれるケースが目立ちます」
だからこそ、欠員は年度途中に生じることが多いのだそうだ。実際、2023年2月の衆議院予算委員会※1では永岡桂子文部科学相が「今年度後半の教師不足の状況につきましては、具体的な数については調査は行っていないものの、文部科学省が各教育委員会から聞き取ったところ、年度後半のほうが深刻化する傾向もあると聞いており」と答弁している。
※1 第211回国会 予算委員会 第7号(令和5年2月6日(月曜日))
「仮に臨時教員が来てくれても、安心はできません。とくに若い方の場合、倍率が低くなった採用試験をクリアできなかった方であることも多いので、しっかりフォローをする必要があります」
中には、何らかのトラブルを起こすリスクを感じさせる人もいるそうだ。違和感を察知した子どもからの声を受け、保護者から多数のクレームが寄せられることもあり、フォローには神経を使うが、それでも「いないよりはるかにマシ」だと相川さんは断言する。それだけ、欠員の状況は学校にとって危機的であるということだ。
「今年度は、年度始まりに欠員が出てしまいました。いったんは臨時教員が決まったのですが、始業式の直前に退職代行サービスを通じて辞退してきたのです。周辺でも同じことが起きていて、ほかの小学校では育児休暇中の教員にまで担任受け持ちの打診があったと聞きました」
いったい何のための育児休暇なのかわからないと憤る相川さんは、「教育を軽視した社会に輝かしい未来は絶対にこない」と語気を強めた。
「文科省は、教員免許がない社会人向けの特別免許の活用を促していますが、もっと積極的に展開するべきではないでしょうか。私見ですが、子どもたちにとって、小中高生時代に魅力的な先生に出会えるのは重要な経験と思うんです。いかに子どもたちを引きつけ、適切に統率するかが問われますので、ビジネスの最前線でマネジメント経験を積んだ人や、子育てが一段落した人たちにぜひ参画してほしいんです」
そのためには、教員個々人の善意や意欲に頼るのを改め、給与や勤務時間などの待遇改善に本腰を入れるべきだと相川さんは提言する。「だって、待遇の悪いところによい人材が集まるわけがないですから」。元ビジネスパーソンらしいこの言葉にこそ、教員不足問題の本質が表れているのではないだろうか。
(文:高橋秀和、注記のない写真:metamorworks/PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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