スタッフのシフトに応じて予約客数を調整する、逆転の発想。
せきを切ったように押し寄せるインバウンド。彼らを囲い込むべく、ホテルは高級化路線を強化している。『週刊東洋経済』5月8日(月)発売号では「ホテル富裕層争奪戦」を特集。ブルガリホテルの全貌、帝国ホテルの逆襲、現場の人手不足や耐震改修が必要なホテルなど、ホテルの「光と影」をリポートする。
コロナ禍が収束しかけている今、ホテル業界は過去最大のピンチを迎えている──。
宿泊業に特化したビジネススクールの運営などを通じ、30年にわたってホテル業界を見てきた私の実感である。
ホテル業界にはコロナ禍で2つの蒸発が起きた。「宿泊需要」と「働くスタッフ」である。より深刻なのは、働くスタッフの蒸発だ。少なくとも10万人以上が消えたと思われる。コロナ禍前に比べ2割が蒸発した計算になる。
コロナ禍が収束に向かい、宿泊需要が急速に戻ってくる一方、働くスタッフは戻ってこない。ホテルに押し寄せてくる利用者を、少ない人員で迎えざるをえず、現場の疲弊はピークに達している。日本が世界に誇ってきた「おもてなし」の質も低下するばかりだ。
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