初めて「ウェルビーイング」掲げる学部を立ち上げる武蔵野大学の狙いと本気度 次期教育振興基本計画の柱の1つとしても注目

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最後にゲストスピーカーとして登壇した鈴木氏は、世界では“GDP(国内総生産)”だけでなく、“GDW(国内総充実)”が定義されて計測されていることや、日本においても閣議決定が行われた重要な計画や教育政策においてウェルビーイングが盛り込まれている現状を説明し、「2023年はチャイルドウェルビーイングの年になる」と断言されました。

そして、私が前回の記事で危惧した日本型ウェルビーイングについても触れ、同調ではなく、それぞれの個性を最大限に発揮しながらハーモニーを奏でるオーケストレーションを目指すと説明されました。

ゲストスピーカーとして東京大学教授で元・文科副大臣 鈴木氏も登壇
(撮影:中曽根氏)

真にウェルビーイングな世界をつくるために必要なこと

生きとし生けるものすべてが幸せになるために「世界の幸せをカタチにする」というメッセージを掲げる武蔵野大学は、仏教精神がベースにある大学です。「科学技術と仏教精神を掛け合わせることで、武蔵野大学ならではのウェルビーイングデザイナーの育成ができる」と西本氏。「これまでとはまったく違う教育を行う!」という言葉から、ウェルビーイングな世の中の実現に向けた熱い思いが伝わってきました。

ウェルビーイングな社会をつくるというのは理想だが、机上の空論であるという意見もありますが、旧来型の経済発展のシステムには限界がきていていることは自明の理です。社会活動家のグレタ・トゥーンベリさんのように、人類だけでなく、生きとし生けるものすべての幸せを考えなければ、私たち人類の未来もありえないということを、若い人ほど感じているのではないでしょうか。

今教育は大きく変わろうとしています。○○大学卒業という最終学歴がものをいう時代は終わりました。社会に出たときに必要なのは、自分は何がしたいのかを探究し実現していく力です。そして、何よりも大切なのは、その力を何に生かしていくのかという目的と志を持つこと。

中等教育もそうですが、教育改革は思いがけないところから起こってきます。アントレプレナーシップ、AI時代のDX人材育成のための「副専攻(AI活用エキスパートコース)」、そして、ウェルビーイング。今注目されるキーワードに直球で取り組む武蔵野大学が、これからの大学教育を変える起爆剤になるのか、その本気度に大いに期待したいと思います。

そしてもう一つ期待したいのが、社会人教育への広がりです。ウェルビーイングな世界を実現するためには、多くの人が、ウェルビーイングについて理解することが欠かせません。

私もポジティブ心理学を学び、考え方がガラリと変わった経験があります。なので、この連載のテーマもウェルビーイングとしています。これまでも記事で書いたとおり、ポジティブ教育を学校現場に広げたいというのが私の願いですが、個人の力には限りがあります。大学に通う時間がなかなか取れない大人たち、とくに教育に関わる方が、ウェルビーイングの基盤となる学問を学べる仕組みをつくってもらえたら、と期待します。

ウェルビーイングという言葉が、当たり前に使われる世の中になったとき、どんな世界が広がっているのかを考えるとワクワクが止まりません。理想と批判するのは簡単ですが、どうしたら真にウェルビーイングな世界がつくれるのか。枠を外して考える時期にきているのではないでしょうか。

(注記のない写真:Kazpon / PIXTA)

執筆:教育ジャーナリスト 中曽根陽子
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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