「勝者」に見える東京に「敗者」の痕跡を見いだす 『敗者としての東京』など書評4冊

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ブックレビュー『今週の4冊』

[Book Review 今週のラインナップ]

・『敗者としての東京 巨大都市の隠れた地層を読む』

・『調べる技術 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』

・『野心と軽蔑 電力王・福澤桃介』

・『文豪、社長になる』

『敗者としての東京 巨大都市の隠れた地層を読む』吉見俊哉 著
『敗者としての東京 巨大都市の隠れた地層を読む』吉見俊哉 著(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・神戸大学教授 砂原庸介

スポーツのように明確なルールが決まってはいない世界において、敗北を受け入れることは難しい。「諦めたらそこで試合終了ですよ」という有名なせりふを裏読みする形で、諦めなければいつまでも敗北にはならないわけだ。とりわけ政治的な闘争であれば、大勢が決まった後でも敗北を受け入れない人々が延々とゲリラ的な抵抗を続けることはある。勝った側も、散発的な暴力を振るう敗者をどのように諦めさせるかに悩む。

「敗者」が生み出す自由さ 越境的な視点が未来を拓く

現代において、東京は明らかに「勝者」に見える。しかし著者の博識は、長い歴史において3度にわたり占領されてきた経験を持つ東京の中に、「敗者」の痕跡を見いだしていく。それは、敗北を受け入れきれない人々の鎮魂の場であり、メインストリームとは違う自分たちがそこにいたことを示す訴えである。

そのような痕跡を保存し、積み重ねていくことができる包摂性、ある種の中途半端さに、著者は東京の面白さや可能性を見る。勝者が作り出す垂直的で局地的な秩序とは異なって、敗者が生み出す自由さ、普遍性を持つ越境的な視点が未来を拓(ひら)くことに期待するのだ。

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