[Book Review 今週のラインナップ]
・『帝国日本と不戦条約 外交官が見た国際法の限界と希望』
・『インド外交の流儀 先行き不透明な世界に向けた戦略』
・『貴族とは何か ノブレス・オブリージュの光と影』
・『歩く江戸の旅人たち2 歴史を動かした人物はどのように歩き、旅をしたのか』
評者・東京都立大学准教授 佐藤 信
3つの顔を持つ本である。当初著者が企図したという外交官・安達峰一郎の伝記の顔。不戦条約を中心とした国際法秩序に帝国日本がどう対応したかという歴史書の顔。加えて、行論中に国際裁判とは何か、不戦とは何かといった、国際法の基本概念をじっくり説明することで、国際法への入り口という顔も持っている。
戦争の「違法化」という試み 国際法秩序をどう維持するか
今次のロシアによるウクライナ侵攻以来、国際法への注目はかつてなく高まっている。1世紀前、第1次世界大戦という空前の惨禍を経て、列強は戦争を「違法化」するという野心的なプロジェクトを試みた。ただ、国内法とは異なり、単一権力による暴力の独占を背後に持たない国際法の基盤は脆弱だ。そこには絶えざる努力が必要とされた。
第1次大戦で総じて益を得た日本はこのプロジェクトに消極的だった。それでも国際連盟事務局次長となった新渡戸稲造、常設国際司法裁判所所長となった安達など、優れた人材がジュネーブでこの秩序の維持に努めた。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け