
(写真:ふじよ / PIXTA)
その時にK先生が心がけているのが、生徒それぞれの強みを見つけて、伝えること。それによって生徒は自信を持ち、それぞれの強みを生かし合うことにもつながる。そのためにも、安心・安全な場をつくることを心がけているそうです。
新しい環境に適応していくために家庭でできること
では、ストレスを取り除き適応していくために家庭では何ができるのでしょうか。A先生は「まず大事なのが睡眠・食事などの生活習慣を整えることだ」と言います。心身の健康と、健全な発達のためには、何より早寝早起き朝ご飯が大切だといわれますが、これは心身を整えストレスから自分を守るための必須事項でもあるのですね。
「新しい環境に入ると、それまでとは違うことがいろいろと出てきます。とくに新入生は、通学方法や通学にかかる時間が変わります。また、新入生でなくても、学年が上がれば1日のスケジュールが変わります。そんなささいなことと思われるかもしれませんが、生活リズムが乱れると、それをきっかけに不調になってしまう可能性があるのです」(A先生)
不調のサインは、やる気がない、落ち込む、不安になる、イライラする、集中できない……など。また、寝られない、食欲がない、頭痛などの身体症状として表れることもあります。1学期の間は、新しい環境に適応していく時期と捉えて、本当は焦らずゆっくりと慣らしていく必要があります。しかし、今の学校はやらなくてはいけないことも多くて、じっくり慣らしていく余裕がないのが現状でしょう。だからこそ、ストレスから身を守るために意識して、睡眠、食事など基本的な生活習慣を整えていくことが大事なのですね。
そうはいっても、新学期早々、子どもが家でだらだらしているのを見ると、親はついつい「だらだらしていて大丈夫か」とイライラしたり、「学校が楽しくないのでは」と心配になったりするかもしれません。でも、新しい環境の中で慣れていこうと頑張っている子どもたちは、そうやってエネルギーを充電していると思えば、見守ることができそうです。
T先生も、「家庭のサポートはやはり大きい」と言います。そして家庭でできることとして、いちばんは「信じて見守る」こと。先回りして心配してしまうと、不安が子どもにも伝わってしまうから。また親が対応を先取りしすぎると、子どもは自分で考えたり決めたりする経験が少なくなり対応力が身に付かず、新しい環境に適応するのが困難になる。実際そう感じるケースが多々あるそうです。もう一つ大切なことが、「子どもの話をよく聴く」こと。家庭で言えずに一人で抱えてしまう子の理由には、「心配をかけたくないから」が多いそうです。 子どもが安心して過ごせる場所をつくることが何より大事。やはりそのためには、親は焦らないことです。
人は、たとえうれしいことであっても、変化そのものがストレスになりますが、しっかりとエネルギーを充電できれば前に向かって進むことができます。新学期、子どもたちが新しい環境にスムーズに適応していくためにも、家庭と学校が安心できる場所であることが、欠かせないと改めて感じました。
(注記のない写真:Taka / PIXTA)
執筆:教育ジャーナリスト 中曽根陽子
東洋経済education × ICT編集部
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