新学期の「子どものストレス」を取り除くために、学校と家庭ができること どう向き合う?先生たちが工夫していること

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例えば、第1志望校に落ちて進学した、親や先生の意向に従って不本意で入学したという場合、なかなか前向きな気持ちにはなれず、ストレスがある状態です。しかし、A先生が言うように、たとえワクワクして新しい環境に入ったとしても、ストレスはあります。

新しい環境に入ってすぐの時期は、すべてが目新しく、ウキウキして前向きな気分でいられますが、たとえこの時期にいい状態で過ごせていたとしても、かなりエネルギーを使っているので、気づかないうちに疲れもたまっていくのです。

つまり新学期は、どの人も無意識で適応しようと頑張っていて、気づかないうちに疲れがたまっている時期なのです。

ライフイベント法というストレスを測る尺度がありますが、この尺度ではストレスのマックスを100とすると、結婚が50となっています。結婚のような喜びの出来事でさえ、新しい環境を前にしたストレスがあるのです。なので、A先生は生徒たちにこうした話をして、「ストレスを感じるのは悪いことではない。自分だけが弱いのではなくて、人間みんな同じで、疲れるのも当たり前だ」と伝えているそうです。確かに、ストレスについて知っておくって大事ですね。

※ 米・心理学者のホームズらが開発したストレス測定法の1つ

学校の現状と工夫していること

5月の連休明けや夏休み明けは、体調不良を訴えて学校に来られなくなる子どもが増えますが、そんな子どもたちが最初にやって来るのが学校の保健室です。

京都府内の公立中学校の保健室に勤務するT先生は、子どもたちは疲れが出てエネルギーが上がらなくなって、やっとの思いで保健室に来ていると言います。中にはもう限界に達している子もいて、状況はさまざまだけれど保健室の先生として心がけていることは次の3つだそうです。

1. 自己理解をサポートする→来室したときに、しんどさを紙に書いて言語化し、その子が一人で抱えているものを外に出すサポートをするよう心がける。

2. 「それでいいよ」と伝える→ 怒りや悲しみの感情を表せる子は、その感情に寄り添う。保健室に来る子は自分を責めていることが多いので、まず受け止めてあげる。

3. 担任との連携 →担任にも家庭にも自分の状況を伝えていない子もいる。その場合、本人の気持ちを尊重したうえで、担任と子どもや家庭の間をつなぐ役割を担う。

実際に学校全体でクラスに2、3人は学校に来られない生徒がいるという、名古屋市の公立中学校に勤務するK先生は、その主な原因は人間関係だと言います。

つまずきポイントの多くが、新しい環境に入っていく時期に、人とつながれないと思ってしまうこと。とくにこの3年間は、コロナ禍の影響で人とつながることができない状態が続きました。そんな中で生徒たちは互いに気を使い、仲良くなれないと思い込んでいる。これには、教室の席の配置も影響しているとK先生。

確かに、前を向いて座っているだけだと、自分の前後左右の人としか話す機会がないですよね。本当は新学期こそ、1週間に1度くらい席替えをしたいけれど、なぜか先生の学校ではそれが禁止されているそうで、その理由は「頻繁に席替えをすると、生徒の顔と名前が一致できないから」。とくに中学生は、教科ごとに先生も変わるのでそうなっているのでしょうが、一般社会ではフリーアドレスのオフィスが増えているというのに、子どもたちだけが今でも堅苦しい空間の中に閉じ込められているのです。これって、極めて大人の都合だなと思いますが、皆さんの学校ではどうでしょうか?

大切なのは、安心してコミュニケーションできる仕掛け

そんな中、K先生はコミュニケーションゲームを取り入れ、できるだけ生徒同士がつながれる機会をつくっているそうです。そして、意外にも生徒同士のコミュニケーションを促すのに役立っているのが授業のICT化だそうです。

K先生は社会科の教員ですが、授業はすべてPowerPointを使用。板書の時間を減らす代わりに、生徒同士の対話やグループワークの時間を取り入れたところ、生徒同士がコミュニケーションを取るようになったそうです。しかも、生徒自身が考えて進める授業にした結果、こちらの想定以上のアウトプットを見せて驚いたと言います。

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