問題はもう起こさない。そう言い切って間違いない


 --事件後の問題処理のため、社長になったのですか。

 当時は売上高5000億円未満の会社で1兆円近い有利子負債があるところですよ。創業者ではなく銀行から頼まれてやることにしたんです。私は当時、大阪佐川の社長をしていた。しかし、あの頃は全国70社ぐらいに分かれていてみんな別会社。その中で東京佐川は断トツの規模でしたね。いつかは(東京佐川事件が)起こるかもしれないとは思っていましたけれども。

 --起こるべくして起きた。

 創業者の周りにいる人はイエスマンばかり、企業が大きくなってくると、どうしても目線が現場から離れますよね。入社直後に1回だけ創業者に「このままではこの会社はおかしくなる」と言ったことがありますが、「生意気を言うな」とめちゃめちゃ怒られちゃって。現場の声を聞いたほうがいいんじゃないかということです。東京佐川を軸に全国ネットワークを目指していたときで私が意見するにはまだ早かったんでしょうね。当時は現場もみんなあくせく夜中まで働いていました。荷物は増えていますし、うちは営業利益率が約30%とすごかったんです。ヤマトさんや日通さんなんかは4~5%とかもっと低いわけですから。初任給も月収50万~60万円で非常によかったんですが、月の休みはわずか1日。社員は機械と違いますからね。休ませるときは休ませなきゃね。

 --よく再建しましたね。

 私は当時、会社更生法を適用すべきと訴えた。東京佐川以外はみんなしっかり経営していたのでみんなで買えばいいじゃないか、と創業者に言いましたが理解してもらえなくて。それで自力で返済しました。運送業は日銭が入る。それでうちは支払いが手形じゃなくて、創業以来、現金決済なんですよ。手形だったら取引先の出入り業者は多分離れたでしょうね。さらに事件が発覚した時期もよかった。あの頃問題を起こしたのはうちだけでした。金融機関としてもまだ面倒を見るゆとりがある。あと2年遅かったら今度は住専問題も始まり、金融機関はそれどころじゃなくなっていましたよね。

 --主力のデリバリー部門の将来性はどう考えていますか。

 もうこんなものじゃないかと思いますね。社会構造が変わってきましたから。10年後はうちは荷物なんか運んでいないかもよ、とずっと言ってきました。今までは佐川急便が全部指示を出す持ち株会社のような存在でした。そうすると佐川急便の伸びが止まれば、グループとして体をなさない。持ち株会社に移行したのはそのためです。各事業会社を横一列にぶら下げ、もし万が一デリバリー部門の伸びが止まっても、ほかでカバーできないかと思って、10年前から考えていました。

 --今回問題を起こしたロジスティクス部門の育成が課題です。

 ロジスティクス部門が始まってもう25年ぐらい経ちますが、まだまだ売上高1000億円を超えないようなレベル。今まではどうしてもコストセンター的な位置付けだったが、その枠を取り外し、独自の事業展開をできるようにしました。今後は外販もしくは海外で外貨を稼ぐような動きをしてくれれば、ここがいちばん可能性がある。

 --栗和田さんはトップ在籍が15年以上と長期政権になっています。交代はしないのですか。

 交代したほうがいいと思っています。持ち株会社にしたのは、それがいちばんの眼目です。ただ、佐川急便は癖がある人ばかりだから、銀行などよそから来ても統制が取れないと思う。だから急便は現場のたたき上げがいい。一方、持ち株会社であれば、外からヘッドハンティングできます。現場のたたき上げでは勉強する時間もなく難しい。過去に一度交代して失敗しましたからね。

 --売上高1兆円が目前。株式公開は考えませんか。

 私がいるうちは多分ない。公開する意味がどこにあるかですよね。東京佐川の問題処理をできたのも非公開だったからだと思っています。いろいろな問題があっても、うちはいちいち、株主の意向を気にしなくていいんです。(役員・社員の持ち株会が過半を握るなど)限られた株主だけですから。私が言えば、それで通るわけですからね。
(聞き手:冨岡 耕記者 撮影:今井康一)

くりわだ・えいいち●新潟県出身。1965年3月新潟県立新井高校卒。77年東京佐川急便入社。92年佐川急便社長。2002年会長に退くが、05年社長に復帰し、06年6月より現職。

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