トム・ハンクスを悩ませる、ある放蕩息子の行状 クリーンイメージの家族の面々とは異質な存在

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皮肉にも、彼の両親は、2020年3月という、最も初期の頃にコロナにかかったハリウッドのセレブリティ。まだ対岸の火事かもと思っていたアメリカ人は、最も愛される映画スターがこの得体の知れないウイルスに攻撃されたことで、一気にパニックに陥ったのである。

それだけの影響力を持つことを自覚しているトムは、回復後、自分の血液をコロナ治療薬の開発研究のために提供したり、ワクチンが承認されてからは接種を呼びかけるなどして、社会に奉仕してきた。それをわざわざぶち壊すようなことを自分の息子にやられたのだから、さぞかしガッカリだろう。

父との関係は微妙

どうやら、チェットは父のことをそんなに好きではないらしいのだ。最近も、チェットは「子供の頃、お手本になってくれるような大人の男性が近くにいなかった」と発言しているのである。父親として、息子からそう言われてしまうのは、とても悲しいはず。ドラッグ依存症から回復した時、チェットは両親の支えに感謝を示していたのだが、その後何が起こったのだろうか。

それでも、チェットはトムが主演する2020年の『グレイハウンド』に出演したし、完全に仲がこじれているわけではなさそうだ。チェットは『エンパイア 成功の代償』『アトランタ』、ブライアン・クランストン主演の『Your Honor/追い詰められた判事』など、近年話題のテレビドラマにも出演し、少しずつキャリアを築いている。

そのうち、また何かの作品で父子共演をし、今度こそチェットが注目されることもあるかもしれない。そんな家族のハッピーな瞬間を、彼の両親は夢見ているのではないだろうか。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

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