小田急車両基地「伊勢原に新設」で起こる大再編 相模大野から機能移転、海老名はどうなる?

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候補地の条件は、線路から近く、大野総合車両所よりも広い面積があり、大型重機の搬入も容易となるよう道路状況がよいこと。また、傾斜がある場所では車両を留置できない。土地の造成をなるべく減らすため、できるだけフラットな場所がいい。

こうした条件に合う場所として最適と判断したのが、伊勢原駅と鶴巻温泉駅の間の線路沿いにある約15万平方メートルの土地である。これだけの広さがあれば、10両編成の列車をばらすことなく流れ作業で検査することが可能だ。早速、小田急は市に相談し、内諾を得た。そして、新たな総合車両所の建設に加え、この土地に隣接し、市の西部と行政地区をつなぐ市の都市計画道路「田中笠窪線」を整備するという2つの事業の実現に向け、市と小田急が相互に連携するという「持続可能なまちづくりを推進する連携協定」が3月8日に結ばれた。

伊勢原市・髙山松太郎市長、小田急・星野晃司社長
連携協定を結んだ伊勢原市の髙山松太郎市長(左)と小田急電鉄の星野晃司社長(記者撮影)

建設予定地の航空写真を見ると農地が広がるが、市の担当者によると、「予定区域にお住まいの方が1軒いらっしゃる」という。総合車両所の建設に関する地元向け説明会を6回開催したが、いずれも不参加。「個別にご説明してご理解いただきたいと考えている」という。

「新駅構想」詰めはこれから

市と小田急は4月以降に環境アセスなどの法令手続きを開始し、2026年度に工事着手、2033年度に総合車両所を完成・操業開始したいとする。建設費については「まだ精査中で公表できる段階ではない」(星野社長)。

近年は鉄道会社が車両基地を一般公開すると、多くの鉄道好きの子供たちが見学に訪れる。市と小田急は新たな総合車両所を、大山に続く新たな観光ツールとして活用することも期待する。「最新のシステムでオートメーション化して省人化も図りたい」(同)としており、子供だけでなく、企業などの視察需要も取り込みたい考えだ。

さらに、総合車両所に隣接した場所にICT技術をふんだんに取り入れた「スマート新駅」を設置するという構想もある。車両所を訪れる客だけでなく、近隣エリアに進出する企業への配慮という側面もあるという。ただ、スマート新駅については市の担当者が説明する局面が多く、小田急側は言葉少なめ。車両所や道路と比べると、今後詰めるべき点は多そうだ。

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