「先生の仕事は“にじいろ”」絵本で子どもに包み隠さず伝えた教員のリアル 「先生はブラック?」の質問に出した答えは

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昼食の時間はわずか数分、仕事を家に持ち帰るのは当たり前——。現役小学校教員で2児の父でもある松下隼司氏は、「教員がブラックであることは否定できないが、マイナスイメージばかりが一人歩きしている」と憂える。2021年に2冊の絵本を出版し、教員の大変な面に触れながらも「子どもたちと一緒にいる時間は幸せ」だと発信している松下氏に、絵本に込めた思いや、教員の担い手を増やすヒントを伺った。

「先生の仕事ってブラック?」の質問にひるんだ

「教員の労働環境は過酷だ」。学校現場に対するマイナスイメージは年々強まり、教員志望者は減少傾向の一途をたどっている。大阪の公立小学校教員として19年のキャリアを持つ松下隼司氏は、自身の現状をこう語る。

「連絡帳や宿題の確認、プリントの丸つけ、授業の準備、子ども同士のトラブル対処など、教員の業務量は膨大です。毎日が時間との戦いで、正直、休憩時間を返上しないと回りません。トイレに行くのを諦めることすらあります」

松下隼司(まつした・じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門優秀賞、大神神社短歌祭額田王賞、Presentation Award 2020 @Online優秀賞など。著書に『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、『せんせいって』(みらいパブリッシング)

ここ数年は新型コロナ対応で、健康観察カードの確認、休み明けの生徒の補習など、さらにタスクが積み重なっているという。自宅療養期間の児童がオンラインで授業に参加できるよう、生徒の自宅まで自らパソコンを届けることもあるそうだ。

2019年の秋、松下氏は4年生の教え子に「先生の仕事ってブラックなんですか?」と、直球の質問を投げかけられた。

この問いがあまりに衝撃的で、とっさに言葉が出てこなかった松下氏は「なんで知っているの?」と返すしかなかったという。松下氏自身は、「どこで『教員=ブラック』という情報を仕入れたのか」という意味で聞いたつもりだったが、児童に対して「教員=ブラック」と認めたようにも取れる返答をしてしまったことをずっと気にかけていたそうだ。

多忙を極めていることは事実だが、教員がやりがいの多い仕事であるのも事実。よい面も大変な面も含めて、教員がどんな思いで子どもたちと向き合っているのかを知ってほしい——。そう思った松下氏は、冬休みの時間を利用して自分の気持ちを詩にしたため、学級通信に載せた。それが、絵本『せんせいって』の原型だ。

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