「悪夢をよくみる人」に知ってもらいたい"夢"の話 なぜ夢を白黒でみる人とカラーの人がいるのか

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ただ、夢を覚えているかどうかには、大きな個人差があります。夢をみる頻度が少ない人、つまり夢が記憶に残りにくい人を、専門的には「低想起者(ていそうきしゃ)」といいます。低想起者の性格的特性としては、情緒が安定していて、のんびり、穏やか、現実的で、ストレスにも柔軟に対処できる傾向があります。

反対に夢が記憶に残りやすい人は、ひと晩にみた夢を2つも3つも覚えていることがあります。夢をよく覚えている人は「高想起者(こうそうきしゃ)」といい、平均的には心配性で不安傾向の高い人です。これは、さまざまなことが気になり、夢の中でもなんとか準備しようとしているのではないかと推測します。夢の中でも準備が終わっていない、時間が間に合わない、何度も何度も繰り返して焦る、などがよく報告される内容です。

このように夢が記憶に残りやすいかどうかをパーソナリティと結びつけたのは、私が学部から大学院時代にかけて実施した、心理検査を用いた調査と睡眠実験によります。

正確に言えば、普段から夢をよく覚えている5人(高想起群)と、普段の生活でほとんど夢を覚えていない5人(低想起群)を抽出して、「毎晩夢をみているのは間違いないし、実験室でレム睡眠のときに起こせばどちらも夢の内容を報告できるのに、何が違うのだろう?」という発想から比較をおこないました。

なお、被検者のもともとの性格については、心理検査で確認しています。実際どちらのグループも、レム睡眠の時間には統計的に有意な差はなく、いずれのグループも夢を報告できたのですが、違いは「レム密度」でした。

つまり高想起者は低想起者よりレム睡眠の時間当たりにおける眼球運動の数が多かったのです。そして夢の内容の不安度が高かったのです。これは脳の活動レベル(覚醒水準)を反映していると考えています。

その当時は、高想起者は不安を引き起こしやすい性格特性があることがわかり、夢に現れた不安度に着目していましたが、いまは夢の鮮明さなども関係していると思われます。鮮明だから覚えているのか、情動的であるから覚えているのかは不明ですが、おそらくそのどちらでもあると考えます。

夢が白黒かカラーか、年代によって違う

みなさんの夢には色がついていますか? それとも白黒でしょうか?

個人差は大きいのですが、白黒の夢をみるのは年配者に多く、若者にそのことを伝えるとみなさん驚きます。大学生では「夢は白黒です」という人はかなり少数派に入ります。

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