赤字鉄道、存続の秘訣は富山県「万葉線」で学べる 「鉄道は必要」、地域の「声なき声」を掘り起こせ
万葉線の存続後も、RACDA高岡では、歩行者天国空間イベント「軽快都市宣言」や朝市の出店を含むさまざまなイベントを開催し、万葉線の利用促進などを継続して行っている。
また、鉄道の存廃問題が持ち上がっている地域からの視察や講演依頼が相次いだだけでなく、大学生が卒業論文のテーマとして取り上げたいと取材に訪れる機会も増えた。
JR西日本は2003年に広島県の可部線可部―三段峡間46.2kmを廃止したが、その後「JR西日本から関係する県庁に対して次は北陸のローカル線を廃止の対象にすると非公式に伝えられた」ことが関係する県担当者から会員に寄せられた。さらに万葉線の線路が高岡駅でJRに直通できるように設計されたことなども背景としてRACDA高岡は「城端線ライトレール構想」を提唱。2020年、富山県は「城端線・氷見線LRT化検討会」を設置した。
各地の鉄道存続運動支えた岡山のラクダ
RACDA高岡と岡山市のRACDAの交流は現在でも続く。岡山市のRACDAでは、関西大学経済学部教授の宇都宮浄人氏など鉄道・交通政策に詳しい有識者や各地のLRT推進団体の関係者を集め、定期的に今後の政策提言に向けた意見交換を行っており、熱い議論が交わされている。この会議にはRACDA高岡の会員も参加する。
あるRACDA高岡の会員は「岡山市のRACDAからは、鉄道存続のための各関係者の合意形成に向けて、市民活動の新しい概念を持ち込み、つねに後ろから支援をしていただいた」と当時を振り返る。岡山市のRACDAは、1998年の万葉線の存続運動にとどまらず、2002年の福井県のえちぜん鉄道の存続運動や2005年の和歌山電鉄の存続運動にも影響を与え、特に和歌山のケースでは両備グループ関係者を紹介するなど縁の下の力持ちとしての役割を果たしてきた。
さらに、岡山市のRACDAでは、「鉄道網の衰退が日本国家の衰退を招く」という問題意識からロビー活動を通じて国会議員で構成される新交通システム推進議員連盟(通称:LRT推進議連)の立ち上げを呼びかけ、2007年に地域公共交通活性化再生法の成立を、2013年には交通政策基本法の成立も実現させた。
全国各地でローカル鉄道存続に対する是非が問われ始めている中で、あらためて小神氏は、「鉄道を必要としている人をフォローするのはもちろん、関心の薄い人に対しても鉄道のメリットを感じてもらえる活動が重要になる。そのためにも事業者、行政、住民といった三者はもちろん、大学の教員といった専門家とも協働する」ことが存続に向けての秘訣になると語った。
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