約20年当事者と家族を支援、臨床心理士が考える「不登校の子の進路選択」 世間体や学力で決めず「学校を活用する」視点を
そのため進路も、心のエネルギーの回復段階を踏まえて考えるべきだという。実際、自分の状態に合った進路を選んだ子のほうが、その後元気に生活できているケースが多いそうだ。高校受験の学校選びのポイントは、「世間体や偏差値で決めないこと。本人がエネルギーをためられる生活を前提に、学校を活用するイメージで選ぶこと」だと福本氏は考える。
「エネルギーが不十分な状態で、目指していた全日制の学校などを選んだ人のほとんどが、入学後すぐに学校に行けなくなっています。中3の時点で始動期の初期と思われる場合に昼間定時制や単位制の高校を選ぶ方もいますが、苦しい段階にある場合は、出席やテストの点数などに重きを置く全日制よりも、毎日通学しなくてもよい通信制の高校を選び、しんどいときは休んで好きなことをするほうがいいと思います」
このように無理をしない生活を優先した結果、好きなことややりたいことを見つけ、将来の道が開けていく子は多いという。
「1つの分野を深掘りした子が、エネルギーがたまると『この仕事をしたいからこの学部に行く』と言って動き出し、急激に学力が伸びることも珍しくありません。中には5年分の学習を1年ほどで取り戻す子も。本人によれば『カラカラに乾いた土にスーッと水が染み込むように学習内容が入ってくる』そうです。1浪するなど時間はかかることが多いですが、自分なりに目的や生きる意味を見つけて経験を広げたうえで進路を決めた子は、うまく社会に出ていくことができています」
経験を広げることは重要で、同年代の友達とは難しかったとしても、自分を理解しようとしてくれる大人との信頼関係を経験してほしいと福本氏は願う。
「中でも学校の先生と信頼関係を築けた子は、大きく成長します。心の交流を考えてくれる先生と出会うためにも、学校見学は重要。不登校の子は身体感覚が敏感なので、学校に足を踏み入れたときの感覚や先生方とお話をしたときの安心感などを重視して選ぶとうまくいく傾向があります。親御さんが代わりに見学に行く場合も、ぜひ先生としっかりお話しされるとよいと思います」
在籍校の教員にも、回復段階に合った進路を一緒に考えてもらえると心強い。とくに中学校や全日制の高校の教員には、不登校の子が選べる進路の情報を得てほしいという。
「今は親もインターネットなどで調べやすくなってはいますが、先生が情報をお持ちだと親もホッとします。実際、通信制高校の合同説明会や不登校関連の講演に足を運ばれる先生はいて、学校に一人でもそういった先生がいてくださると安心です」