日銀の政策修正は「黒田サンタ」の贈り物だった 日本国債を「カラ売り」してきた英ファンドを直撃

✎ 1〜 ✎ 8 ✎ 9 ✎ 10 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

市場関係者にとって青天の霹靂だった12月20日の日銀の政策修正。だが、日本国債を売り持ちしてきた英ファンドからすれば「実はとても簡単に予測できること」だったという。

日本銀行のリリース
マーケットを驚かせた12月20日の日銀の発表。このサプライズを大歓迎したファンドがいた(編集部撮影)
世界の金融市場がクリスマス休暇に入る中、日本銀行は12月20日、10年国債利回りの上限を0.25%から0.50%に引き上げると発表し、市場に大きなサプライズを与えた。この長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)政策の微調整は、黒田東彦総裁時代に採用された超緩和的な金融政策スタンスからの転換の始まりを告げる可能性がある。
運用資産800億ドルを超える欧州最大級の債券運用ヘッジファンド、ブルーベイ・アセット・マネジメントは、日本国債に対して売り持ち(ショート)ポジションを取っており、今回の修正で大きなリターンを得た。なぜショートポジションを続けたのか、そしてこの先の投資スタンスとは。最高投資責任者のマーク・ダウディング氏に話を聞いた(インタビューは2022年12月21日に実施)。

今年で最も好調なパフォーマンスの日だった

――あなたのファンドは2021年の春に1ドル=130円前後まで円安が進んだときから、ショートポジションを取っていました。昨日12月20日に日銀が長期金利の変動幅を拡大する政策修正を発表しましたが、それについての受け止めは。

マーク・ダウンディング氏
マーク・ダウディング(Mark Dowding)/1993年にモルガン・グレンフェル銀行で債券ポートフォリオ・マネージャーとしてキャリアをスタート。マクロ債券投資家として26年以上の投資経験を持ち、2010年8月にブルーベイ・アセット・マネジメントに入社して以来、シニア・ポートフォリオ・マネージャーを務める。ブルーベイ入社以前は、インベスコやドイチェ・アセット・マネジメントの欧州債券部門責任者を務めていた。ウォーリック大学で経済学の理学士号(優等学位)を取得している(写真:本人提供)

ブルーベイで運用しているさまざまな戦略で日本国債のショートポジションを保有していたため、十分な備えがあった。昨日を振り返ると、おそらく今年最も好調なパフォーマンスの一日だった。非常に素晴らしいパフォーマンスだ。

日本国債のショートポジションは、異なる戦略を持つ複数のファンドにまたがっている。ポジションの大きさやエクスポージャー(資産の保有比率)はファンドごとに異なるため、得た利益の詳細については具体的な数字を伝えることが難しい。ただ、利益の額が大きかったというのは間違いない。

日銀のYCC修正が近いということは、ここ数カ月考えていた。パンデミックから脱した日本経済が健全な軌道に乗るところまで来ていると考えていたからだ。日本ではインフレ率が上昇を続けていることも確認できていた。プラスマイナス25ベーシスポイント(0.25%)のYCCは、もはや必要ない政策だったのだ。YCCはその目的を達成したため、もはや有用な政策ではなくなっていた。

――YCCは固定為替相場制に似ているとも指摘していますね。

次ページいつまで「売り持ち」を続けるのか?
関連記事
トピックボードAD