アスキー創業者・西和彦が新設、「とがった理系人材」育てる工科大学の中身とは 「日本先端工科大学(仮称)」、25年開校目指す
例えば、ゆくゆくは新設大学で全国の中高教育の底上げを目的とした副読本を作り、それを中高生にも読んでもらえるようにしようと考えています。とくに最近は地学の学びが取り残されているように感じるので、地学を中心とした物理、化学、生物のバランスを整えて情報も付け加え、中高の理系科目の再編成を行いたいと考えています。
大事なのは受験ではなくて就職です。しかも仕事は超長期のマラソンのようなものなので、自分の好きなことを仕事にしたほうがいいと思います。子どもたちには、将来どんな仕事に就きたいのか、もっと考えてほしいです。
起業に関しては、私の経験からすれば、本当に大変な仕事。1000人に3人くらいしか成功できない世界です。ですから、もし学生が起業したいのであれば、まず企業に入って、基礎的なビジネスの知識やノウハウを学んだうえで、起業することをお勧めします。
経済成長を続ける国々を見渡し、日本は今後どのようなビジネスモデルを採用するのかを考えることも大事です。現状、日本は“ミニアメリカ”のような国となるしか道はないと思っていますが、どんな分野で起業すればいいのかも考える必要があるでしょう。
――日本先端工科大学(仮称)開校後は、理事長としてどんな大学にしていきたいとお考えですか。
将来的には音楽と映像、アニメ、漫画なども教える芸術学部、情報セキュリティーを教える学部、建築に関する学科、そしてエンジニアのためのビジネススクールの創設も視野に入れています。理系人材がセルフマネジメントできるようにし、自立できるようにお手伝いしていきたいです。
私が学園長を務める須磨学園は祖母がつくった学校で、私にとって学校経営は家業なのです。だからか、アスキーのOB・OGには「学校みたいな会社だった」と言われるのですが、新設大学は「会社みたいな大学」にしたいなと思っています。私はこれからの残りの人生、日本発の「本物の技術者」育成のための教育に関わっていきたいと思っています。

日本先端工科大学(仮称)設立準備委員長、NPO法人IoTメディアラボラトリー理事長、須磨学園学園長
1956年生まれ。75年早稲田大学理工学部入学、在学中にアスキー出版創業。草創期の米マイクロソフトにて、創業者であるビル・ゲイツの下でボードメンバー兼新技術担当副社長としてパソコンの開発に従事。99年工学院大学大学院で博士号(情報学)。2000年~03年米国マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員教授。01年より祖母が創立した須磨学園の運営に従事。17~21年東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻IoTメディアラボラトリーディレクター。20年より大学の新設に向けて準備中
(文:國貞文隆、写真:梅谷秀司)
東洋経済education × ICT編集部
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