アスキー創業者・西和彦が新設、「とがった理系人材」育てる工科大学の中身とは 「日本先端工科大学(仮称)」、25年開校目指す
感覚的には、文系総合職の2倍くらいの年収であれば、理系に人材は戻ってくるはずです。今後ICTの世界が進展する中、需要と供給の関係から言えば、エンジニアの年収は必ず上昇していくでしょう。すでにGAFAをはじめ、世界のIT企業ではエンジニアの年収は高騰しており、将来的に理系人材の未来は明るいと見ています。
基礎教養課程は反転授業、留学プログラムや奨学金制度も充実
――大学ではどのような人材を育成しようとお考えですか。
一言で言えば、役に立つ人材。即戦力の人材を育てたいです。そのためにも「高度な専門性、高度な人間性、高度な国際性」を身に付けられる教育を行います。この3つは社会で生きていくための必要な力です。
具体的には、研究プロジェクトを通じて問題解決能力、新しいアイデアを生み出す能力、それを実行する能力、コミュニケーション能力を養っていきます。英語で学ぶ授業を多く開講するほか、留学プログラムも充実させる方針で、全員が3つの地域に最低3カ月ずつ短期留学します。アジアでは台湾かベトナム、米国では東海岸か西海岸、ヨーロッパでは英国かドイツを選べるようにし、現地の大学で学んだり、インターンシップをしたりする形を考えています。

――カリキュラムにはどのような特徴がありますか。
工学部工学科として定員は150名を予定、「表面・超原子先端材料工学」「医工学」「IoTメディア」「移動体工学」「地球・月学」の5つのコースを用意しています。
1~2年は「工学基礎」「21世紀スキル」「語学」「キャリア」「心と身体」の5項目を基礎教育として学びます。とくに21世紀スキルは、クリティカル思考、ロジカル思考、問題を創造的に解決する力を身に付ける科目を設置し、他大学にない角度で基礎教養を捉えていきます。
また、すべての授業を反転授業形式で行います。反転授業とは、学生は説明動画などを見て予習し、授業では主にアクティブラーニングやディスカッションをしながら学習する授業です。このようにして国際社会で通用するエンジニアの基礎力を身に付け、その後の3~4年時で専門教育を行います。
教授陣については現在、コミットメントレターにサインしてくださった方が45名。研究者ほか、企業の役職経験者、高名な学者など各専門分野のエキスパートを招聘するつもりです。また、関東学院大学と連携して単位交換をできるようにし、文系と理系の科目を相互に学べるような仕組みもつくっていく方針です。
――選抜方法についてはどうお考えですか。
学力試験としては大学入学共通テストを基準に、科目は英語と数学、理科、情報などの成績を重視します。その後の2次試験は、90分の面接。長時間なので面接対策は無駄になるでしょう。面接場所は全国主要都市12カ所に用意し、教員が出向いて実地で面接します。男女問わず、個性を持った学生に集まってほしいと考えています。
――学びのサポートとして奨学金制度も充実させるそうですね。
初年度は、ほぼ全員に奨学金を出すことができればと考えています。次年度からも選ばれた学生には、学費の半額程度を支給していきたい。奨学金でサポートすることで、国立大並みの学費で済むような環境をつくりたいと思います。今、ビル・ゲイツにも奨学金制度を支援してくれるよう頼んでいるところです。
大事なのは受験ではない、どんな仕事に就きたいか考えて
――長く教育分野に携わってこられましたが、日本の教育課題をどうご覧になっていますか。
頭のトレーニングとして受験勉強は意味あることかもしれませんが、役に立たないことばかりを教えているように見えます。また、最近の子は、本や新聞を読まない、手紙も書かない。ゲームやスマホに夢中で、例えば美術のスケッチの時間も撮影した写真を見ながら描くなど、何事も機械で何とかしようとします。でも、それは違うだろうと思います。
学園長を務める中高一貫校では、すでにサマーキャンプやリーダーシップ教育など特別講義を私がやっていて、23年度は臨時教員免許を取って情報も教える予定ですが、もっと本質的な学びについて教えなければと思っています。