不登校の子どもに「学校以外の居場所」つくる、7人の子を持つ母親の素顔 不登校過去最多、フリースクール運営に助成を
しかし、1、2年次は9月〜翌3月、3年次は7月〜翌3月、学校にはほとんど行かず、家での学びが中心だった。
「自分の頭の中にきちんと整理している引き出しがあるけど、学校に行くと無理やり引き出しをこじ開けられてぐちゃぐちゃにされて、また元に戻される感覚がして気持ちが悪い。だから行きたくない」と訴えてきたという。
「学校に行かなくてもいいのか?」と不安に思うのをやめた
2015年に1年生になった次男も、「学校は楽しいところだと思っていたけど、行きたくない」「学校が怖い」と、行き渋りを続けた。
子どもたちの様子に思い悩む生駒氏をハッとさせたのが、「ママ、勉強は、学校じゃなくてもできるよ」という、当時小3の長男の言葉だったという。
「『でも、学校は勉強だけじゃなくて、人と関わる場所でもあるんだよ』と言ったら、『日本には、通っている子が3人しかいない学校もあるでしょ。うちは兄弟が4人いて、6人家族でしょ。人と関われるよ』って。9歳でここまで自分のことを考えている息子に、『それでも学校に行きなさい』とは言えませんでした。ここまで腹が据わっているのだったら、彼がちゃんと育っていけるよう学校以外の場所でサポートするしかないと、吹っ切れました」

(撮影:尾形文繁)
生駒氏は、「子どもが学校に行かなくても本当にいいのかな?」と不安に思うことをやめた。
長男、次男は自宅で本人たちの興味関心を追究する時間を過ごし、下の子どもたちは川崎市の公設民営の遊び場「川崎市子ども夢パーク」の敷地内にある「フリースペースえん」に通い始めた。子どもたちは、しだいに自信と自分らしさを取り戻していったという。
学校の先生たちも自分らしく生きられる社会に
自身の子どもたちの不登校について、「勉強や生活を一律に管理されること、学校の“空間”になじめなかったこと、友達にからかわれたりすることにストレスを感じたことなど、さまざまな理由があったと思います」という生駒氏。
「三男も2年生くらいから不登校なのですが、生き物が好きな彼は『学校が狭く感じる。僕は近くの森林公園に通いたい』と言いました。今は、『フリースペースえん』と『川崎市子ども夢パーク』に行っています」
生駒氏は、子どもたちの不登校について、ことあるごとに学校に相談してきた。
「連携がうまくいかないこともありましたが、放課後、息子が好きな石の標本を見せて教えてくれたり、『この子は集団が合わないようだから、あまり無理させないで、3、4時間目に来て給食を食べて帰るぐらいがちょうどいいと思います』と言葉をかけてくれたりなど、その都度親身に対応いただいた先生方には感謝しています。先生たち一人ひとりは、すごく頑張ってくださっていると思います。子どもたちと同様、先生たちも自分らしく生きられる社会になってほしいと思うので、その部分も応援したいと思っています」
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「学校に行くのが当たり前」という風潮が強い中、不登校の子どもやその保護者は「学校に行けない自分はダメな存在だ」「子どもが学校に行っていないことを周りに言いづらい」など、ネガティブな思考に陥ってしまいがちだ。

「子ども時代は、その子にとって1回しかないもの。その子ども時代に、はっきりとした根拠がなく責められたり、自己肯定感がそがれた状態で育っていくのはよくないと思うんですよね。学校に合う子も合わない子も、どこで育ってもちゃんとそれぞれの子一人ひとりが大切にされて、『自分はここに生まれてきて、よかった』『自分には、自分を幸せにする能力、周りの人や社会の役に立つ能力があるんだ』といった自信をつけて育っていくべきだと思うんです。その場を、私たち大人が用意してあげないといけないと思いました」