日本電産、カリスマ経営者が招いた大量退職危機 異常に高い業績目標がプレッシャーに

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「事業本部によっては月ごとの業績のグラフが判で押したように毎回3カ月ごとに波打つところもあって、関さんは非常に問題視していた。そのため関さんが担当していた車載事業本部では、決算不正につながりかねないとして、このような二重管理をやめ、実態どおりの業績報告をしていたのです」(前出の車載事業本部関係者)

いったい会社のためを思っていたのは誰だったのかということになる。

雑誌『FACTA』10月号によると、空調機器向けの部品を製造する子会社の日本電産テクノモータで、顧客と事前に取り決めた仕様と異なるコストの安い素材で勝手に製品をつくり、顧客の知らないまま納入しているとの内部告発が寄せられているという。取引先の空調メーカーにはまだ、何も知らされていない。製品のリコールにつながりかねない問題で、同社の信頼が失墜するどころか、多額の損害賠償を求められることにもなりかねない。

これが事実であれば、永守氏が求める高い業績目標を達成するために、無理を重ねた結果だと指弾されても仕方がないことだ。

株価至上主義が吹き荒れる日本電産に背を向けて退任する役員も相次いでいる。今年だけで関氏以外にも既に8人が退任した。そのなかには1980年代に入社したいわゆる生え抜きの役員も2人いる。

役員だけでなく社員も大量退職の危機

役員だけでなく、社員レベルでも大量退職の危機にある。

入手した社内文書によると、昨年4月から今年3月末までの1年間で関連会社への出向も含めて253人もの本社社員が退職している。日本電産本体の社員数は2500人あまり。じつに10人に1人が退職したことになる。さらに、今年4月から8月末までの5か月間で早くも113人が退職した。

内訳を見ると、関氏が担当した車載事業本部の社員が昨年4月から今年8月末までに合計で120人と目立つ。関氏辞任をめぐる経緯に嫌気が差したとみられる。

関氏の辞任後、日本電産の社長には創業以来の古参幹部である小部博志氏が就いた。だが、永守氏も認めるように、73歳の小部氏は次期社長が決まるまでのリリーフ役。今後は外部からの人材登用を断念し、社内から後継者を選ぶと永守氏は宣言した。だが、気づいたときには、「そして誰もいなくなった」ということになりはしまいか。株価至上主義の果ては内部崩壊への道かも知れない。

なお、株価への永守氏の執着ぶり、株価から逆算した業績目標、関氏との確執の経緯、さらには月ごとの業績報告において報告値と実態が乖離していること、子会社での勝手な仕様変更の問題などについて、東洋経済編集部から日本電産広報に対して詳細に質問したが、期限までに回答はなかった。

【情報提供のお願い】東洋経済では、日本電産が直面する経営や業務上の問題を継続的に取り上げています。こちらのフォームへ、情報提供をお待ちしております。
大清水 友明 ジャーナリスト
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