──スタートアップの分析はビジネスモデル、資金調達、経営論など経営者や個別企業に着目したものが多いですが、本書のアプローチはそれらとは異なります。
個別の企業に着目する研究は、主に経営学で行われてきた。近年変わってきているところもあるので一概に言えないが、経営学と経済学の違いとして最も大きいのは、「スタートアップをどのような立場で見るか」だ。
経営(商)学部の授業では、起業に関する一連のプロセスを当事者であるアントレプレナー(起業家)の視点で見ていくことが多い。例えば、どうやって創業するか、起業して問題に直面した際の対応、資金調達の方法や注意点などハウツー的な要素を重視する。ただし注意が必要なのは、成功企業に注目するベストプラクティス研究から「どうすれば成功するか」はわからないという点。成功要因を明らかにするには、失敗企業と比較する必要がある。
一方、経済学では経済全体の中にスタートアップ企業を位置づけ、俯瞰するような立場を取る。企業間の「異質性」に着目して、全体の中でどのような個人が創業するのか、どんな企業が成長するのかといった問題に取り組む。ただし、成長というのはあくまで「結果」で、より強い関心を寄せるのは、その「原因」や結果が出るまでの「プロセス」だ。多くの企業を客観的に捉えて傾向を分析し、適切な介入を検討する。いわば政府に近い視点で、どんな支援が企業の成長を促すかについて考える。
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