五輪汚職が映し出した「剛腕・角川会長」の光と影 衰えぬ影響力、五輪に「肝煎り事業」の復活託す
ドワンゴとの統合後も、KADOKAWA社内で別格の存在として君臨した角川会長。業界最大手に育て上げた今、目立った後継候補は不在のままだ。
東京五輪・パラリンピックのスポンサー契約をめぐり、大会組織委員会の元理事に賄賂を提供したなどとして、複数の役員らが逮捕・起訴された大手出版社のKADOKAWA。10月4日、東京地検は角川歴彦会長を贈賄の罪で起訴した。
初の逮捕者が出た9月6日、東京地検は東京・千代田区にある本社の強制捜査に入り、角川会長の自宅でも家宅捜査が行われていた。
社内が混乱に包まれる中、当の角川会長はKADOKAWAなどが運営する「ところざわサクラタウン」(埼玉県所沢市)内にある、角川武蔵野ミュージアムにいた。世界的アーティストである奈良美智の立体作品「PEACE HEAD」の設置作業で、自ら陣頭指揮を執っていたのだ。
PEACE HEADは2020年のミュージアム開業当初、2階エントランスに設置されていた。それをミュージアム脇にある屋外の水盤に移動させるだけの作業である。様子を見ていたスタッフは、「会社が大変な時によく来たな」と少し驚いたという。
その前日の9月5日の夕方、角川会長は報道陣の囲み会見に応じ、賄賂への関与を完全否定していた。翌朝にスケジュール通り所沢まで足を延ばしたのは、自分は無関係だという自信の表れだったのか。翌週には、角川会長も逮捕された。
旧来的な体制を壊し業界トップへ
「この件、会長は了解している?」
KADOKAWA幹部によると、社内では役員に決裁を求める社員に対し、そう確認してきたという。社長含め役員は「さん」付けで呼ばれるが、「会長」だけが別格扱いだ。
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