音楽の才能開花?授業で「ボーカロイド」活用した岡崎市立南中で起きたこと STEAM教育の視点でICT活用、他教科とも連携

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授業の幅を広げるボーカロイド、思わぬ才能発掘も

ボーカロイドによって、音楽の授業の幅が広がったと坂井氏は言う。中学校の学習指導要領では、音楽は鑑賞、歌唱、創作、器楽の4つの活動で構成されている。今までは歌唱と鑑賞がメインで合唱コンクールに向けた授業が多かったが、ボーカロイドの導入で創作の実践がやりやすくなったそうだ。

「これまで生徒は音やリズムを作れても、それを歌や演奏で表現することができませんでした。しかしボーカロイドは、作曲の工程も視覚的にわかりやすいため取り組みやすく、歌も演奏もやってくれます。やりたいことをうまく再現してくれるから、音楽や歌が苦手な子も『楽しいな』と感じられたのでしょう。音楽にあまり縁がなかった野球部の生徒がすばらしい曲を作ってみんなに称賛されるなど、才能の発掘にもつながっています。ボーカロイドとの出合いを機に『これから音楽を頑張ろうかな』と言ってくれた子もいました。また、作り手の意図や思いを想像するなどの気づきも得られたのではないかと思います」

坂井氏自身も、国語や美術との連携を通じて、他教科の教員との会話から自身の授業の参考になるアイデアを得るなど学びを広げることができたという。

一方、いくつかの課題も見えた。ボーカロイドは誰もが使いやすい反面、作曲の過程では楽譜が表示されないので、楽譜を読み取るスキルが身に付かない。歌唱や演奏の際、楽譜から得られる多くの情報が重要になるため、今後はそこをどう結び付けるかが課題だ。

また「ボーカロイド教育版II for iPad」は、本家のボーカロイドに比べて楽器や声の数が少なく設定されており、作れる曲の長さにも制限がある。機能がシンプルすぎるため物足りなさを感じる生徒もいるという。

機能に関してはアップデートに期待したいが、南中では今後どのようにボーカロイドを活用していくのか。坂井氏は次のように考えている。

「2021年度はコロナ禍で歌唱が制限されたこともあり、年間の音楽授業の4割でボーカロイドを使いました。コロナ対応の変化から今年度の活用は2~3割の計画ですが、国語との連携や卒業制作は引き続き実施します。視覚的なわかりやすさを生かし、音の長さや高さなどの基礎学習への活用も検討しています。行事などの特別活動はもちろん、総合的な学習の時間や英語の時間などとも連携して面白い授業ができるのではないかと思います」

(文:酒井明子、写真:岡崎市立南中学校提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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